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番外編1:お薬なんて使っちゃダメ!2
結局昨日は何も無いまま、夜を過ごしてしまった。
いや、キスはたっくさんしたけれど。
それもよかったんだけどさ。
とりあえず、俺は一人紅茶を飲みながら、家で映画を見ていた。
借りてきたもので、楽しめるし、勉強にもなるからよく見ている。
一本目はアクション映画。二本目は恋愛映画。三本目は青春ロードムービー。
とにかく、今はたくさんの映画を見なくちゃ。
二本目の半ば、家のベルが鳴った。
そっとドアを開けると、宅配業者だった。
『マヒロ・ヤマオカという人はご在宅ですか?』
『俺ですけど……』
『宅配便です。サインを』
俺に?
誰からだろう。
サインを済まし、小包を受け取る。
宅配業者はぺこりと一礼すると、また別の家へ行ってしまった。
小包の宛名を見ると、町田の名前だった。
町田とは大学卒業後も連絡を取り合っている。
今は……何故か北海道にいるらしい。
小包を開けると、手紙とマトリョーシカやチョコレート、蜂蜜、ロシアの紅茶……それと小さな小瓶が入っていた。
何故北海道にいるのに、ロシア土産ばっかりなのか分からないけど。
「何だこの瓶?」
ラベルを見ても、「元気ハツラツ!」や「精力」など書かれており、錠剤が入っている。
「なんだこれ?精力剤?」
ラベルを読んで、俺は顔が真っ赤になった。
ラベルには、『淫乱MAX ヒグマ堕ち』と書かれていた。
「い、淫乱……!?」
どういうことなのか、手紙を読んでみると、「元気?」という相変わらずの軽いノリで書かれていた。
元気?こっちは今、北海道から九州までの日本横断の旅に出ています。
前話した、パートナーと一緒に。
学校の教員も楽しかったけど、こうやって旅して回るのも面白い。
ちなみに、ロシア土産はパートナーの故郷に行った時に買ってきたもの。
ロシアの紅茶はジャム入れて飲むらしいぞ。
もう見たかもしれないけど、土産と一緒に入れといた薬は精力剤。
お前らも長いから、夜の生活、マンネリしてんじゃねぇの?(笑)
良かったら使ってみ。副作用とか全然ないから。
俺もパートナーと一緒に使ってみたけど、威力すごいから!
一回2錠って書いてあるけど、多分1錠でも効くぞ。
それじゃあ、また。
精力剤……。
夜の生活……マンネリ……。
マンネリはしてないと思うけど、夜の生活があまり充実はしてないかも。
でも、これって……精力剤って言ってるけど、び、媚薬ってやつじゃないの?
使っても大丈夫なのかな?
町田は副作用ないって言ってるし……。
た、試しにちょっとだけ……1錠だけシンと使ってみる?
俺は悶々としながら、シンが帰宅するのを待つことにした。
午後五時。
俺はソファのところでついうとうとしてしまい、寝てしまっていた。
あ!ヒグマ堕ち!出しっぱなしだ!!
俺は慌てて、薬を食器棚の奥に隠した。
とりあえず、そこならあまり使わない食器が置いてあるから、ひとまず大丈夫だろ。
『ただいまー』
シンが帰ってきた。
俺は慌てて、ソファに飛び乗った。
何となく……気まずくて。
『お、おかえりー!』
『何だ?このマトリョーシカは』
シンは机の上に置きっぱなしになってたロシアのお土産の1つをマジマジと見ている。
『大学の時代の友達のお土産なんだ。ロシアに行ってたみたいで』
『ふぅん。ロシアか……昔行ったことある。ボルシチが美味しかったな』
『本場のボルシチは食べたことない』
『いつか食べに行こう』
『楽しみにしてる』
シンが買ってきたケーキと、俺が作った……というか茹でたパスタにシン特製のミートソースをかけたミートスパゲッティを一緒に食べた。
やっぱりシンが作ったミートソースは美味しい。
未だにレシピを教えてくれない。
「肉を焦がさなくなったら教えてあげる」って失礼しちゃうよな。
肉を焦がしたのなんて……週に2回くらいだ。
週一になったら、教えてくれるかな。
仕事もできて、運転も上手で、バイリンガルのクォーターで、おまけに料理上手とか……神様は与え過ぎだ!
料理はほとんどシンが作ってくれてたから、俺は片付けに徹することにした。
「あ、そう言えば……」
お皿を見て思い出した。
ヒグマ堕ち……どうしよ。今食器棚に隠してるんだよね。
「どうしよっかなぁ……」
「何をどうするんだ?」
急にシンがのしりと背中に抱きついてきた。
誰もいないと思ってたから、かなりびっくりした。
考えてる内容も内容だったから。
「あ、いや、えっと……どうやったら、シンにミートソースの作り方教えてくれるかなぁって思って」
ついつい日本語で言い訳してしまう。
シンはそんなことかと言わんばかりに、小さく笑うと俺の額にキスをした。
「パスタをちゃんと茹でられるようになったらね」
「えー……」
確かに、今日のは少し硬かったかもしれないけどさぁ。
シンのあの意地悪な顔がムカつく。
……やっぱり、あの薬入れちゃおうかな。
たまには、シンが乱れる姿を見るのもいいかもしれない。
いつも、俺が泣かされてるし、たまには俺が主導権握ってもいいよね?
俺は寝る前の晩酌に薬を混ぜることにした。
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