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第2話

そんな歪んだ幸せ。それも長くは続かなかった。 1年目が過ぎ、2年目もこの調子なのかと神足が思った矢先、冨手は神足の目の前から消えてしまった。 『コウへ』  神足は軽い風邪をひき、その風邪を冨手にうつさないように、実家でアシスタント業をしていた。そして、風邪が完全に治って、3日振りに冨手の自宅兼職場に足を向かった。コンビニへでも行っているのだろうか。冨手の姿はバスルームやトイレも覗いたが、見えなくて、代わりに、いつも神足が仕事をしているデスクへ白い封筒に3文字だけ並んだものが置いてあった。 「キワが書いたのかな?」  冨手極だから神足はキワと呼んでいた。  神足は風邪がすっかり良くなった声で呟くと、冷蔵庫に冨手の好きなアイスやら簡単に食べられるおかずを冷蔵庫に仕舞う。封筒にしっかりと折り目をつけてその折り目に沿って破った。すると、白い便箋にも3文字だけ並んでいた。 『ごめん』  これはどういうことなんだろう、と思うと、神足は不安に思ってスマートフォンを取り出す。冨手のスマートフォンの番号に発信していた。 「出ない……」  どこかで思っていたことだが、神足は震える指で『冨手極』から『冨手秀子(しゅうこ)』の番号を選択する。 「もしもし、神足ですが」  冨手秀子、冨手の姉に当たる女性は暫くすると、神足からの着信に応えてくれた。「元気?」と聞く声は男女の違いは勿論あるが、冨手に似ていた。 「ええ、はい。突然、すみません。キワは……、極君はいますか?」  動揺するのを隠し切れずに、神足は二の句を継ぐ。すると、彼女は神足が思いがけないことを言い出した。 「ああ、あの子なら暫く旅行に行くって」 「りょ、旅行ですか?」 「ええ、そうだけど? てっきりコウ君も一緒だと思ってたわ。あの子が借りていた家もちょうど私が家を探していたからそのまま住むことになったし」  それから、神足は秀子との会話を終了すると、へたへたとその場に座り込んでしまった。  ごめん。それだけでは分からなかったが、そこには「今までごめん。別れよう」と書いてあるように神足には思えた。

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