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第10話(R18)
『好きじゃない』。
言葉で続いていく男女と女同士、それに、男同士のラブストーリー。神足がうさぎのmimi原作のコミカライズの話を田口から依頼されて、1ヵ月が経った。
田口にラフ画を見せる最初の日で、神足は緊張していた。今まで、数多くの作品のアシスタントをこなした。作家の急病等の時に、ネームから入稿までを仕上げたこともある。
ただ、小説を読んで、キャラクターを起こして1コマ1コマを描いていくなんていうのは初めてのことだった。
その上、今日は田口の1人の筈だったのだが、隣にはなんとうさぎのmimiもいた。
「今日は僕だけと思ってたんですけど、うさぎの先生も是非ということだったので」
田口はちらりと横目で隣の人物を見る。
神足は何となく、原作を読んだ感じで女流作家だと思っていたのだが、うさぎのmimiは沢尻皇哉(さわじりこうや)という男だった。
「初めまして。『好きじゃない』の原作者で、うさぎのmimiです」
だが、男とは言え、線が細く、作家というよりは子ども服のモデルや子役のタレントがそのまま大人になったような可愛らしい容姿をしている。おまけに色素の薄い白い肌に、瞳も黒というよりは薄いブラウンをしているので、神足は人形のような人だと思った。
「神足拓海です。初めまして」
差し出される手は小さな手だと言われる神足よりも小さくて、今はあまり絵を描いていないのだろう。筆マメだらけだったかつての恋人や班目に比べると、すべすべとした滑らかな手だった。
「ごめんなさい。今日は田口に無理を言って連れてきてもらって!」
沢尻は「どうしても、噂の神足先生に会いたかったんです」と無邪気に言うと、神足も「そんな、先生だなんて」と笑う。
この日のラフ画見せは概ね順調であり、ある1点を除いては、田口も沢尻も大変満足した様子だった。
「んっ」
神足は何故か、着ているものを脱ぎ、どこかのベッドに横たわっていた。いつか自身がラフ画で描いたようにその身体にはかつて冨手につけられた傷の数々が広がっていて、見ている者の加虐心を煽る。
「これが、神足さんの受けた傷の全て……」
班目に似た男は神足の身体をまじまじと見ると、今では薄くなり始めたその傷の1つに唇をつける。指や舌先でも別の傷を愛撫されていく。
「あぁ、ダメ! ダメですっ! せんせっ」
傷だけに留まらず、冨手に良いように嬲られて、いやらしく変えられてしまった乳輪や臍。さらには、既に男を知っている自分のアナルまで左右に開いて、班目似の男は躊躇することなくキスを落とす。
それから、作家の道具でもある指を入れ、優しく快楽へ誘っていく。そのことに神足はダメだ、お願い、やめてくださいと拒んだ。だが、そんな制止には反して、神足の身体は何度も何度も震えて、先走りが滲む間もなく飛び出るように出てくる。
「まだ、らめせんせっ。やめ、て……」
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