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第三話(R18)

「あぁ、なお、ず、みぃ」  沢尻のモデルような顔が僅かに快楽に歪む。当の班目はまだ余裕がある調子で、沢尻の直腸に指を突き立てている。  ローションで潤みきったナカは班目の指を咥え込んでいた。 「もぉ、いぃ……挿れ、て……僕の、ナカにぃ……」  途切れ途切れになっていく沢尻の言葉に合わせるように。  班目はゆっくりと指を引き抜くと、沢尻の直腸に陰茎を入れる。  班目としては沢尻のことは嫌いではない。沢尻の描く物語は到底、班目に描けるものではないし、彼と話していると、今まで考えることもなかったストーリーやキャラクターが生まれていくこともある。同じ漫画家としても尊敬しているし、恋人としても彼の気持ちは尊重しているつもりだ。 「(でも、これが恋だとすると、恋っていうものはなんておざなりなものなのか……)」  沢尻には悪いが、班目としては恋愛や恋人という存在に物足りなさを感じていた。 「(恋をしたら……例えば、漫画が描けなくなるくらい、息を吐くことさえ困難になると思ってた。まぁ、描けなくなるなんてそんなことは生きてる限りありえないけど)」  そして、班目のそんな気持ちが分からない沢尻でもなかった。 「アぁあァァァァァ……!!」  沢尻は頬を赤らめながら班目によって達した。  身体に感じる熱とは対照的に、冷め切った感覚のまま、班目を抱きしめた。  ぬるま湯のような恋なんてベタな例えだと思い、それがいつまで続くかと班目は思ったが、終わりは割と呆気なかった。  ぬるま湯はすっかり熱を失って、さらに冬の日の深夜に室外へ放り出していて、徐々に氷になっていった。というのとは違い、ぬるま湯の入っていたカップがひっくり返ってしまったのだ。  いや、ひっくり返ったというのは適切な気もするし、適切ではない気もするが…… 「直純?」  男と腕を組んで歩いてきた沢尻は班目の名前を呼んだ。  男は確か、田口という自分達よりも若い編集者見習いで、パーティーで見かけたり、他の漫画家と話しているところを見かけたりしていた。

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