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第四話

「仕事か?」  班目としては嫌味のつもりもなく、他意はなかった。  というのも、沢尻と田口と出会したのがホテルだったのだが、自分自身、仕事が捗らない時は手頃なホテルに籠ることもあるし、特段、美味しい訳ではないが、高いコーヒーを飲みたいと思って、ホテルのラウンジに行くことだってある。  セックスをする、なんていう名目では生まれてこの方、行ったことはなかった。  何も言わない沢尻に田口は代わって班目の問いに答えようとするが、沢尻はとんでもないことを言い出したのだ。 「仕事……じゃなくて、遊んでたの方が正しいかな? 田口」  ホテルという場所で男2人で遊ぶ。それでさえ、直接的ではなかった。  だが、沢尻はさらに言葉を重ねる。 「遊んでた。寝てた。身体を重ねてた。本当に色んな言葉があるよね。どんなに言い方を変えても、やることはさして変わらないのに」  人形のように整った沢尻の顔立ちはこの上なく、下衆い言葉によって引き立てられていて、美しかった。 「次、どこ行く?」 「お帰りなさいませ、○○様」 「もうそんなところ、触らないの」 「バッグに靴? 良いよ、好きなのを買いなさい」 「××さん、ここです」  ホテルの中では様々な言葉が行き交っていくのに、班目も沢尻も田口も何も言わない。短い沈黙。  それは沢尻がふっと笑うまで続いた。 「……僕らの物語は終わりかな? 班目先生」  沢尻としては班目に詰られたかったのだと思う。そうでなければ、班目にベッドに押し倒されて、乱暴に身体を暴かれるか、単に蹴る殴るの暴力でも甘んじて受け入れたかも知れない。  しかし、沢尻としては1番、残酷な結末になってしまった。 「すみません、沢尻さん」

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