29 / 80
第29話
中side
「あ!!中くん!」
水無月先輩が気が付いてこちらに駆け寄る。それを眩しそうに見つめるその人。
ゆっくりと歩いてきて目の前に来た。
雪割先輩より少しだけ背が高い。雰囲気は雪割先輩に良く似てる…
そうか…
「初めまして。芙蓉 葉月です」
水無月先輩気づかなかったんだ。きっと本当に引かれていたのは雪割先輩ってこと。
だってそのくらい先輩と彼は良く似てた。
話し方、仕草…醸し出す空気…
「ん?俺の顔に何かついてる?」
「いえ。不躾に見てすいません」
「いいよ。美空からよく君の事聞いてるよ。すごく可愛い後輩ができたって。これからも美空の事よろしくね」
すごく綺麗な笑顔…
雪割先輩とはここは違う。雪割先輩はあまり笑わないから…笑ってるけどきっとあれは張り付けた偽物だから…
「中くん。彼は俺たちの先輩だよ」
「カッコいいですね」
「ありがとう。今度一緒にお茶でもしようね?」
「はい。では失礼しますっ!」
あぁ…でも…違う…?雪割先輩が芙蓉先輩に近付きたくてあぁなったのかもしれない…わからないけれど…
ただ言えることは…二人はお互いを思い合い愛し合ってるってこと。二人の姿は幸せで包まれていたから…
先輩は水無月先輩のそんな姿をあんなにも近くで見てきて…どれだけ辛かったんだろう…
あんなにも水無月先輩を大切に思っているのに…
俺が先輩の本当の笑顔を引き出すことができたら…
どれだけ嬉しいだろう…
ともだちにシェアしよう!