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第29話

中side 「あ!!中くん!」 水無月先輩が気が付いてこちらに駆け寄る。それを眩しそうに見つめるその人。 ゆっくりと歩いてきて目の前に来た。 雪割先輩より少しだけ背が高い。雰囲気は雪割先輩に良く似てる… そうか… 「初めまして。芙蓉 葉月です」 水無月先輩気づかなかったんだ。きっと本当に引かれていたのは雪割先輩ってこと。 だってそのくらい先輩と彼は良く似てた。 話し方、仕草…醸し出す空気… 「ん?俺の顔に何かついてる?」 「いえ。不躾に見てすいません」 「いいよ。美空からよく君の事聞いてるよ。すごく可愛い後輩ができたって。これからも美空の事よろしくね」 すごく綺麗な笑顔… 雪割先輩とはここは違う。雪割先輩はあまり笑わないから…笑ってるけどきっとあれは張り付けた偽物だから… 「中くん。彼は俺たちの先輩だよ」 「カッコいいですね」 「ありがとう。今度一緒にお茶でもしようね?」 「はい。では失礼しますっ!」 あぁ…でも…違う…?雪割先輩が芙蓉先輩に近付きたくてあぁなったのかもしれない…わからないけれど… ただ言えることは…二人はお互いを思い合い愛し合ってるってこと。二人の姿は幸せで包まれていたから… 先輩は水無月先輩のそんな姿をあんなにも近くで見てきて…どれだけ辛かったんだろう… あんなにも水無月先輩を大切に思っているのに… 俺が先輩の本当の笑顔を引き出すことができたら… どれだけ嬉しいだろう…

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