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第32話
中side
「本っ当にすいません!!」
頭を下げた。謝っても許してもらえないだろう…
「あいつは…こうは俺の幼なじみなんですけど…普段はあんなんじゃないんです。」
「中。大丈夫だから顔あげて」
雪割先輩の優しい声が響く…どうしてあんなこと言ったのにそんな優しい声を掛けてくれるの?溢れそうになる涙を堪えながら恐る恐る顔を上げた…
雪割先輩と目が合い気不味い…
「美空先輩もすいません!」
「…」
「先輩?」
やっぱり…傷付けた…あんなにも優しくしてくれた水無月先輩を…傷付けた…
「…ん…大丈夫だよ!それに事実だし。実際体の関係を持ったこともある。俺は元々同性が好きで今の恋人も男の人だから。でも…雛、驚いたよね?」
違う…自分が傷付いたんじゃなくて…雛先輩に隠していたことを申し訳なく思ったんだ…どうしてこの人たちはこんなにも互いを思い合えるのだろう…羨ましいな…出来ればずっとその和の中にいたかったな…
「驚いたけど大丈夫。っていうかむしろもっとやれ」
雛先輩が明るく言う。無理してるんじゃない。自然だ…この人は見かけによらずとても強いのかもしれない…
その後の先輩たちの会話は俺にはもうほとんど入ってこなかった…こうと話さないと…俺の大切な幼なじみなんだから…こんなにも思い合える友人としてずっと仲良くしていたいから…こうは俺に何かあればいつも全力で助けてくれた…こうに何度も助けられたんだ…
「…。だから大丈夫だよ。あたるん。そんな泣かないの。ね?」
急に声をかけられ現実に引き戻された。
「よも先輩…」
でもそれも一瞬で俺はまた俯いてしまった…でも…葉月…その名前が耳に入る。やっぱりあの人が恋人だったんだ。
「よかった…先輩たちの立場が悪くなったらって…よかった。俺は今日は教室戻ります…こうと話さないと。じゃあ…また」
「おい…中!」
雪割先輩がせっかく俺を呼んでくれたけど振り返ることはできなかった…
この時立ち止まっていればよかった…こうと二人で話そうなんてしなければよかった…こんな目に合うのだったら…
敦夢の狂気の表情に凍り付くことがやって来ることをこの時は知らなかったんだ…もう…先輩に会えなくなることも…
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