2 / 3
お願いだから1
僕は零夜 で、彼は黒鈴 。
式神と、荒神。哀しいね。
だから僕は笑うんだ。何時消えるとも知れない命。……一番大切な黒鈴のために、笑っていたいから。
黒鈴が、ほらまた僕を呼んでる。……行かないとね。
「こくれー」
上に上げた僕の手首の鈴が、しゃらりと音を立てる。待ったかな、なんて言いながら首を傾げると、かちゃりと金属音。
息苦しさにすぐ首を元に戻した。……彼の趣味は本当に悪いよなあ、なんて思いながら首輪に触れる。呪殺符と同系統の結界が張られてるせいで、外すことは出来ないけれど。
「いや……待っては、無い」
優しい彼に歩み寄って、ありがとうと微笑む。本当に黒鈴は優しいね。
僕の名前は零夜。しがない式神。
ほんの少しだけ見目が良いから、今の主さんにはかなり遊ばれることが多い、かな。
因みに付けてる首輪はその主さんの趣味。あんまり良くない趣味だよね。
因みに僕の目の前に居る彼の名前は黒鈴。僕の親友で荒神。
無造作にはねた髪がもったいないような美人でね、強いし格好いいんだ。無口だけど、とっても優しい。
紅色の瞳が僕の心を射貫く、みたいな感じがするけど……それでも温かいんだ。
「うーん、君がそう言ってくれるのは嬉しいけどさ、待たせちゃったか僕は気にするタチなんだよね」
待ち惚けさせるのは、僕の本意じゃ無い。
というか、叶うことなら四六時中彼の隣に居たいし。まあ、勿論無理な相談なんだけど。
僕には主さんという枷が居る。でも黒鈴は何時だって自由だから、肉体的で物理的な“自由”っていうものの大きさが違う。
羨ましい事もあるけど、やっぱり寂しさの方が勝る。幾ら願っても、僕から黒鈴に会いに行けるのは……偶にの事だから。
僕は風に僕の声を焼き付けて、黒鈴を呼んで、黒鈴に呼ばれて。
僕らはそうして、束の間の再開を果たすんだ。
次なんて無いかもしれない、次も会える、なんていう確証はほっとんど無いんだ。
仕方ないよね、僕は式神なんだから。
「零夜、お前は何と、言うか律儀だな……」
……それは君だけにだけだよ、黒鈴。
ともだちにシェアしよう!