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第3話

「……ビール貰うぞ」 煙草を口に咥えると、テーブルに置かれたビニール袋に手を伸ばす。 もうすっかり日が落ち、室内は仄暗い。 その中で、小さな赤い光が少しの間強く主張する。 まるで線香花火の様な、儚くも美しい一瞬の輝きを僕に見せる。 そして光が弱まると、ふぅーっ、と竜一の口から煙が吐き出される。 プルタブを上げる音。 左手の指で煙草を挟み、右手で僕が買ってきた缶を持ち上げ、口に当てる。 「……アルコールゼロじゃねぇか」 ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ後、竜一が僕の方を見て苦笑する。 「ごめん……未成年だから、アルコール入ってるの買えなくて……」 「……そりゃ、そうだな」 飲みかけのそれをテーブルに置くと、竜一が再び口を開く。 「灰皿ねぇか?」 ハッとして僕は体を起こす。 「ごめんなさい……」 「……いや、責めてねぇ。 何処にあるか言ってくれりゃあ、いいから」 あんなに性急すぎて乱暴だったのに こういう所で、チラッと優しさを見せる竜一は、……ズルい…… 台所にある事を告げると、竜一はオーラの放つ逞しい背中を見せ、部屋から出ていく。 一年前、竜一に初めて犯された時……竜一はまだ学生だったのに…… それが、いつしか スーツをビシッと着こなし、髪をオールバックにして 僕との年の差は変わらないし、まだギリギリ未成年なのに 竜一はもう、二十歳をとっくに越えた大人に見える。 ……それもそうか…… 僕の知らない裏の世界を生きているんだから 箔が付くのは、当たり前か…… そんな事をぼんやり考えていると、竜一が戻ってくる。 煙草を持っていない所を見ると、台所で済ませてきたのだろう…… 手に持っていた空のグラスをテーブルに置く。 「……さくらも飲むか?」 テーブルに置かれたビニール袋から、麦茶のパックを取り出しコップに注ぐ。 「……あ……僕が、」 慌ててベッドから下りるけれど、内腿が大袈裟に震え、腰が抜け、床にぺたんとお尻を付いてしまう…… 「……ったく、」 しょうもねぇ女だな…… そう言われた様な気がして、顔が熱くなってしまう…… そんな僕の腕を、竜一が引っ張り上げる。 「……色々気ぃ遣うんじゃねぇ」

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