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第13話

小さなテーブルの端に置かれた、ピアスケース。その中央には、二人分の夕食が並ぶ。 用意したお茶を運んでテーブル前に座ると、竜一が口を開く。 「……昨日も、そんな格好してたな」 一枚羽織っただけの、薄手のTシャツ。そして、ショートパンツ。 「……え」 「んな露出の高い格好で、外なんかうろつくんじゃねぇぞ」 「……」 「お前はすぐ、変態にヤられるからな」 少しだけ不機嫌そうな顔をした竜一が、手元の箸を掴む。 「……」 ……そっか。 昨日、機嫌が悪かったのは……そういう事だったんだ。 「……ん、解った」 嫉妬というか、束縛みたいな所が……ちょっとだけ心地いい。 だって僕は、竜一のものだから…… 下から覗うようにじっと見つめていれば、視線を此方に向けた竜一と目が合う。 だけどそれは一瞬で。直ぐに視線を逸らされてしまったけど……竜一の頬が、少しだけ赤くなっているのが解った。 「……何だよ」 「ううん」 あの竜一からは想像できない姿に、何だか可愛さを感じてしまって。 嬉しくて。心が擽ったくて……愛おしさがどんどん募っていく。 その感情を誤魔化すかのように目を伏せた竜一が、手にした味噌汁の椀に箸先を入れてくるりと掻き回す。 「……最近、何か変った事はねぇか?」 椀に口を付けて啜った後、いつもと変わらない……ビー玉のような眼を僕に向ける。 危険だからと、突き放されて別々に暮らしていた時とは状況が違う。僕の存在が関係者にバレてしまったら、僕に危険が及んでしまうと警戒している。 「……ううん。今度ガスの点検がある位かな」 「それは、偽物じゃねぇだろうな」 椀を置きご飯茶碗に持ちかえると、竜一は主菜のハンバーグに箸を入れる。 「……ん。お知らせの紙には、ちゃんと不動産会社の名前が書いてあったし。作業員が来たら、社員証を見せて貰ってからドアを開けるようにするから、大丈夫だよ」 「……そうか」 僕の返しに頷き、一口大に切ったハンバーグを口に入れた後、添え物のポテトサラダも続け様に入れる。 「美味いな」 少しだけ目を見開き、そう呟きながら咀嚼する。 「……」 竜一からその言葉を聞くのは初めてで。作って良かったと、心の中が甘く痺れる。 食器を片して居間へ戻ると、テーブルにあったピアスケースを竜一が手にしていた。 「………工藤に、会ったのか?」 箱を開け中身を確認し、ピアスを摘まみ上げて眺める。

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