15 / 555
第15話
×××
太陽が顔を出し、カラッとした風が僕の肌を優しく撫でる。
窓を全部開けて、朝から掃除と洗濯で忙しく働く。
白のタンクトップにショートパンツ姿の僕は、ベランダに出て洗ったシーツをパン、と引っ張って干す。
風に吹かれて揺れるそれを洗濯ばさみで止めながら、つい昨日の事を思い出してしまった。
「……」
……僕のエッチ。
肌に触れられる感覚が蘇ってしまい、それを直ぐに払拭する。
部屋に戻り、先に干して取り込んでおいた掛け布団をベッドに戻し、再び居間へと戻る。
そしてやり途中だった、テレビ台や小さなタンスの上を丁寧に拭く。
元々物をあんまり持っていないから、拭き掃除はそんなに手間ではない。
雑巾を洗い、四つん這いになって隅から隅まで床拭きをする。
ふわっ……
時折入る心地良い風。
それになびいて揺れるカーテン。
手を止めて、窓の外を眺める。
雲ひとつない、清々しい青空。
こんなに穏やかな毎日を過ごせる日が来るなんて、想像もしていなかった。
過去の僕にもし会えたとしたら、今の僕の状況を教えてあげたい。
……でもきっと、反発して信じないんだろうけど……
「………」
……だけど、ふとたまに感じる、違和感。
なんでだろう……嘘なんじゃないかと錯覚を起こす事がある。
僕の居場所は、こんな穏やかな場所なんかじゃない……わからないけど、そう誰かに責め立てられている気がする。
心を緩めた瞬間を、誰かが狙ってる。
僕の首を絞めようとする、手……
夢から覚めて、鬼のような形相をした母が、僕の首にかけた手に力を籠めているんじゃないか……
もしかしてこれは、死ぬ間際に見せる……幻想なんじゃないか……
……ぱさっ、
一瞬強い風が吹き、カーテンが強く煽られる。
僕の視線の先にある青空を、そのカーテンが遮る。
その瞬間、現実を突き付けられた様な気がした。
「………」
普通の人が感じる日常。
こんな僕が過ごしてしまっていいんだろうか……
世の中に交わっているようにみえて、周りに上手く溶け込めず
本当は学校の教室にいた時感じたように
あのカーテン一枚を隔てたこちら側……普通の人とは別の場所に、僕はいるんじゃないか……
そう思うと、青空を消されてから
薄い膜に張られた様な違和感が、すうっと消えていく。
綺麗になった部屋。
六畳二間のアパートは、一人で暮らす僕には、広すぎる……
ともだちにシェアしよう!