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第22話
──さくらっ!
何処からともなく現れ、僕を犯し続ける男を次々と倒し、汚れた僕の身体を強く抱き上げる──ハイジの幻影。
代わる代わる犯され、その度に上下に揺れる天井をぼんやりと眺めながら……脳内で、再生と巻き戻しを繰り返し、必死で精神を繋ぎ止める。
絶望の中、何度も何度も……
「……!!」
ハッと我に返れば、強引に下着ごとショートパンツを脱がされ、曲げた両膝を顔の方へ押し上げられていた。
ハァ、ハァ、ハァ……
割り開かれた下肢の中心に、屹立した男の欲望が宛がわれる。
「……ゃ、」
やっとの思いで出た声はか細く、酷く掠れていて──本能的に拒絶する精神が暴走し、足枷となったトラウマを責め叫 く。
その狭間で僕は、手足を動かそうと必死に抵抗を試みる。
「……」
逃げるチャンスなら、きっとあった筈。
だけど、仮にあったとして……それすら僕は、生かせられなかった……
「ハァ、はぁ……クソ、挿んねぇな……」
僕の両膝を掴んだまま、ぐいぐいと強引に押し込もうとする。
「……まさか、わざと閉じてんのかぁ?」
上手くいかないのだろう。
男の濡れた先端が滑り、辺りに先走り液を何度も擦り付けているだけで、挿るどころか真面に宛がう事すらできなくなっている。
「淫乱のくせに、……ハァ、ハァ……勿体ぶってんじゃねぇよ!」
アナルセックスが初めてなのだろうか。それとも、性行為の経験すら無いのか。
ただ単に、焦りすぎているだけか……
何れにせよ、挿入する時の角度が合っていない事に、全く気付いていないようだ。
「………少し、切ろうかなぁ」
ボソッと呟かれたその言葉に、一瞬で背筋が凍る。
男が再び手にしたカッターが、僕の下肢の中心へと消える。
チチチ……
刃先を、更に伸ばしたのか。
無機質で小さな音が、緊迫した空間に響く。
「───ッ、!!」
……やめ、……や……
迫り上がってくる、恐怖。
可笑しいほど身体が大きく震え……息が、できない……
ガギィンッ──!
その時──金属が断ち切れる音が、遠くで響いた。
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