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第21話

心の中でどんなに叫んだって、声は誰にも届かない。 震えて動けない僕は無力で、あの時のトラウマに囚われたまま……自分の身すら守れない…… ……まただ…… 視界が歪み涙が溢れ、零れていく。 体はあの時の痛みをまだ覚えている。 カッターで切り刻まれた痛みを……内臓を引っ掻き回された様な吐き気を……集団で代わる代わる輪姦され……何度も何度も何度も何度も………!!!!!! 鳩尾がぎゅうと握りつぶされる痛み。 屈辱的なフラッシュバック…… どくどくと暴れだす心臓。 妙な高揚感と絶望感。 ……やめ…… それでも何とか抵抗しようと歯を食いしばる。 だけど頭と心は、男を太一らと錯覚し、容赦なく身も心も震わせる。 ……や、……だ、………ハイジ…… ハイジ…… あの時の僕が、何度も叫ぶ。 さくらっ……! 幻影のハイジが何処からか現れ、僕を強く抱き締める……… ……輪姦され、上下に揺れる天井をぼんやりと眺めながら 巻き戻しと再生を繰り返すように、それを絶望の中で、何度も何度も…… ……!! 気付けば、強引にパンツごとショートパンツも全て脱がされ、膝を押し上げられていた。 そして、割り開かれたそこに男の体幹が捩じ込まれる。 「……っ、」 逃れたいと、本能が叫びながら暴れる。 なのに、あの時の恐怖が僕を雁字搦めに縛り付けてしまい 指先一本でさえ、動いてはくれない…… 逃げるチャンスなら、あった筈…… ……だけどあったとして それさえも多分、生かせられない……なんて…… 「…ハァ、はぁ……くそ、入んねぇな……」 ぐいぐいと僕の後孔に男の硬くなったモノが押し入ろうとする。 「……わざと閉じてんのかぁ?」 上手くいかないのだろう。 先端が滑り、周りに先走り液を何度も擦り付けるだけで、入るどころか引っ掛かりもしない。 「淫乱のくせに……勿体ぶるんじゃねぇよ……ハァハァ」 アナルセックスが初めてなのだろうか。 性行為自体の経験が浅いだけか。 それとも単に焦りすぎているだけなのか。 ………角度が合っていない事に気付いていないようだ。 苛立った男は、その捌け口の矛先を僕自身へと向ける。 「………少し、切ろうかなぁ」 その言葉に、ゾッと背筋が凍る。 男の手にしているカッターが、僕の足の間へと消えた…… チチチ…… 刃先が、更に出されたのか…… 不気味な音が、恐怖の空間に響いた。 ……!! やめ、……や…… ……迫り上がってくる……恐怖…… ガギィンッ! その時、金属が断ち切れる大きな音が響いた。

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