21 / 558
第21話
静寂に包まれた空間に響く音は、やけに大きく。だけど、その音を聞いただけでは何が行われているのか……きっと、想像に難い。
……ハァ、ハァ、ハァ、
引き裂かれた後、首筋に顔を埋められ、先程とは反対の乳首を指で弄ばれる。
耳に掛かる、貪りつくような男の荒い息。ねっとりとした蛞蝓のような舌が、耳朶から耳殻へと這い上がり、穴の入り口を濡らしながら塞ぐ。
ぴちゃぴちゃと鼓膜に響く不快な水音。脳内が、麻痺していく……
「そうそう、いい子だ。……はぁ、はぁ……」
男の厭らしい指先が、外腿を這う。強引に男の下肢を内腿の隙間に捩じ込んだ後、ショートパンツの裾から手が滑り込む。
「……!」
………た、すけ……て……
何度も唇を動かそうとするけれど、蚊の鳴くような声すら……出てくれない。
手を動かそうにも、指先が僅かに動くだけ……
ハァ、ハァ、ハァ……
男の手が、厭らしく胸を揉みしだく。興奮し、張り詰めたソレを僕の下肢に押し付けながら、胸の小さな尖りを口に含む。
……びちゃびちゃっ、ぐちゅ……
「……」
レイプされた事なら、何度もある。
だからといって、慣れてる訳じゃない。
心の中でどんなに叫んだって、声は誰にも届かない。
震えて動けない僕は、無力で。あの時のトラウマに囚われたまま……自分の身すら守れない。
……まただ……
視界が歪み、溢れた涙が零れる。
身体はまだ、あの時の痛みを覚えてる。
カッターで切り刻まれた痛みを……内臓を引っ掻き回された様な吐き気を……集団で代わる代わる輪姦される屈辱を……
もう、何度も何度も何度も何度も──!!!!!!
鳩尾を圧迫され、胃を握り潰されるような痛み。
忌まわしいフラッシュバック。
その度に、ドクドクと酷く暴れだす心臓。
妙な高揚感と絶望感──
……やめて……
それでも。
何とか抵抗しようと奥歯を噛み締める。
だけど──脳と身体は、作業員 を太一達と錯覚し、恐怖に陥って震えが止まらない。
……ゃ、だ………ハイ、ジ……
ハイジ……、
あの時の僕が、何度も叫ぶ。
ともだちにシェアしよう!