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第24話
まさか、こんな形で再会するなんて……
「……ハイ、ジ……」
やっとの事で声を発し、口角を僅かに持ち上げて見せる。
僕なりに、笑ったつもりだった。
だけど。そんな僕を、ハイジが冷たく見下ろす。
「……」
……確かに、ハイジだ。
だけど……以前の、僕が知ってるハイジ……じゃない……
……ドロ…ッ…、
作業員の額を、抉ったのだろう。
血塗れたボルトクリッパーの刃先から、粘着性のある赤黒い血が、糸を引くように滴り落ちる。
「……っ、」
ドロッとした、生暖かい感触……
ゆっくりと、両腕を持ち上げる。
あんなに動かなかったのに。痺れは残るものの、いとも簡単に動けるようになるなんて。
……赤い、……血……
顔を拭った後、その手を浮かせてみる。
五本の指の隙間から見えた先には、冷ややかに見下ろすハイジの眼──
……なん、で……
鮮明に蘇る、目の前でアゲハの首が掻っ切られる光景。
その血飛沫に、思わず目を瞑る。
「……」
……ああ、もう……情けない。
何でこんな、……震え……ちゃうんだ……
手が宙に浮いたまま……もう、動けない。
「知り合いか?」
高級スーツに身を包んだ男が、ハイジにそう言い放つ。
それに反応したハイジが、男の方へと振り返りながら答える。
「……いえ、全然知らねぇ奴でした」
「へぇ……」
何かを見透かすかの様に、顎の下に手をやりながらハイジの眼を覗き込む。
「……止めて下さい、龍 さん。
昔、惚れてたオンナに……ちょっと似てただけっすから」
そう答えたハイジが、血を流してぶっ倒れた作業員を横目で見る。
高級スーツの男──龍が、僕を興味深げにじっと見下ろす。
「……山本の女、な訳ねぇか。
にしても、どっかで見た事ある面してんだよなぁ」
「……」
バタバタバタ……
二人が入口のドアへと顔を向ければ、慌てた様子で部屋に入ってきたのは、黒地に白龍のスカジャン姿の男。
「スイマセン、龍さんっ、」
腰を低くさせながら龍に駆け寄り、そっと耳打ちする。踵を返し、足早に部屋を出ていこうとする龍が、その入口前で足を止める。
「……あぁ、ハイジ。そういやぁお前、男でも女でもイケるんだったよなぁ」
そう言って振り返った龍は、口を歪ませながら鋭い視線をハイジに向ける。
「ソイツ、……お前の女にしちまえ」
龍の台詞に、一瞬見開かれるハイジの眼。しかし、直ぐに冷酷さを取り戻す。
「……」
床に滴る血。それが、次第に固まっていく。
震え脅えるだけの僕に、ハイジが鋭い視線を落とす。
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