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第24話 再会【ハイジ編】
×××
昼間から降りしきる雨。
風も吹いているのか、バチバチと窓ガラスに激しく当たる雨音が、時折聞こえる。
ギシ、ギシ、
部屋に響く、軋む音。
不規則的に強弱をつけて響く雨音とは相反し、主張するよう強く鳴り響き、同じリズムを刻む。
ベッドの柵に、僕の両手首を拘束した手錠が引っ掛けられ、霞んだ視界の中で上下に動くハイジの顔をぼんやりと眺めていた。
その瞳は冷たく、虚ろで深い闇色に濁っている。
……あの作業員は、どうなったのだろう。
ハイジに後ろを貫かれながら、そんな事を考える。
龍という男が出て行った後、絵に描いた様なチンピラ風の男が二人部屋に入り、倒れた作業員の傍らにしゃがみ込む。
ゴトンッ、とボルトクリッパーを床に投げ落としたハイジは、僕の片腕を強く掴んで引っ張り上げた。
その時の瞳は、今もなお強く僕を責め立てる……
……この瞳……
そうだ、僕が初めてハイジと出会ったあの夜……
ゲイが集まるパーティー会場で、差し伸べられた手。
意味もわからずその手を掴み、一緒に抜け、行き着いたのは、ラブホテル。
そのベッドで事に及ぼうとして……僕は……
『……りゅう、いち』
僕の口から漏れ出た男の名に、一瞬で殺意に変わったハイジの瞳。
「……!」
そんな事を思い出していたからだろうか。
ハイジの両手が、僕の首にかかる。
「さくら……殺してやるよ」
竜一が用意してくれたアパート。
そこでの生活は、僕には勿体ない程幸せだった。
竜一の為に作る料理も。掃除も洗濯も。竜一を待つ間の時間も。
竜一を出迎えて、抱き合って交わす会話も。重ねる唇も……
全てが愛しくて、大切な時間(もの)だった……
今までの僕には縁の無かった、居場所。
少し世間とは違うけれど……それでも穏やかに、静かに暮らしていける、僕の大切な場所(もの)……
竜一という、鳥籠の中で生きる。
その他なんていらない……自由なんていらない。
……ただ、竜一の手の中で、
僕は一生を過ごせれば、それでいいと思っていた……
冷たく見下ろす、ハイジの尖った瞳。
首に掛かるその指に、力が籠められる。
人生の結末の場所が
僕をあの家(地獄)から引っ張り出してくれた、ハイジの手中だなんて……皮肉すぎる。
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