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第25話
絞められていく……
頸動脈を的確にとらえた指に、力が籠められる。
その手圧は迷いもなく、容赦もない……
ドクドクとそこが次第に激しく脈打ち、耳の奥から細くて高い、キーンという音が響く。
苦しさからか、ピクリと指先が痙攣した。
……墜ちる。
全身が、ビリビリと微量の電気を流されたかのように痺れる。
ドクドクドク……
酸素を送ろうと心臓が暴走し、血液を懸命に流す。
指先や爪先が冷えていき、痺れが強くなっていく……
「………!」
何かが頬に当たる。
虚ろなままゆっくりと瞬きをひとつすれば、ぼやけた視界に映るのは……
……ハイジ……なん、で……
あんなに殺意に満ちていた瞳が緩み、そこから大粒の涙を零していた。
「………」
僕から離れたハイジは、両手のひらを広げじっと見ていた。
その指が、小刻みに震えている。
手首を拘束されたままの僕は、足を折り畳み横向きに身を縮めると、げほげほと咳き込んだ。
「……さくら」
その声まで、震えている。
ボルトクリッパーで、何の躊躇もなく作業員の額をフルスイングした人物とは思えない。
「オレ、さくらを失いたくねーよ……」
不安に満ちた瞳が揺れる。
ハイジに引っ張り上げられた後、僕は目隠しをされ、車に乗せられた。
そして、この部屋の今いるベッドに放り投げられて、やっと目隠しを外された。
僕の上に跨がったハイジ。
その顔は、照明の逆光でよく見えなかったけれど、狂気に満ちどこまでも深い闇に覆われた瞳が、鋭く吊り上がっているのだけはわかった。
……バンッ
特に抵抗などしていなかった。
ただ、驚いた瞳をハイジに向けただけ。
……なのに、ハイジはいきなり僕の頬を打った。
手加減はしたのだろう……多分、警告のつもりだ。
もし抵抗でもしたら、こんなものじゃ済まなかったかもしれない。
何処までも深い闇……
それがやっと、取り払われた。
「……さくらっ、」
背中を小さく丸め、ハイジが震えたままの両手で顔を覆う。
整わない呼吸を繰り返しながら、僕はハイジに顔を向けた。
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