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第30話
先程まで甚振 られていた所に、ハイジの熱く張り詰めたモノが宛がわれる。
それがゆっくりと……慎重に挿し込まれていく。
「……」
乱暴に扱われ傷付いてしまったソコは、どんなに優しくされたとしても……痛い……
その上、ゆっくりだから返って痛みが助長されてしまう。いっそ乱暴にされた方が、麻痺する分辛くないかもしれない。
「──ッ、!」
「痛ぇか?」
不安げに顔を覗かれ、小さく頭を横に振る。
違う……それだけじゃない。
もう、竜一以外とはしないと心の中で誓ったのに。結局こうなってしまうんだな、という絶望と諦めが、同時に襲い掛かって僕を責め立てる。
「良かった……」
ほっとした声。
弱々しい瞳。
プラスチックの様にキラキラと光る白金の髪が、頼りなげに揺れる。
「……これ」
左の二の腕に刻まれた、アゲハ蝶の刺青。
その隣には、咲き誇る桜──そして、全体的に舞い散る花弁。
「あぁ、これか……?
蝶が消えねーから、一緒になっちまったけど……」
まだ、アゲハを憎んでいたあの頃──ハイジの腕の中で一頻り暴れた僕に、アゲハ蝶を消して桜を彫ると、優しく言ってくれた光景が思い出される。
「……桜吹雪……」
「言っとっけど、遠山の金さんじゃねーからな」
僅かに持ち上がるハイジの口角。と同時に、パンッパンッと強く腰を打ち付けられる。
「……ッ、!」
「あ、悪ぃ……」
直ぐに動きを止めたハイジが、僕の顔を覗き込む。
「……ううん、平気」
そう答えれば、寄せられた唇が僕のそれにそっと重ねられる。
──もし若葉の事件がなく、アゲハに会わなかったら。
多分僕は、また暴れていたかもしれない。
ハイジの逞しい腕の中で──アゲハが舞い飛び、桜が舞い散っている。
その光景は美しく、見る人を魅了し、虜にする。
だけど──僕もアゲハも、自分の意志で自由に舞っている訳じゃない。
多分僕達は、生まれた時からこういう運命だったんだろう──
「……いい子してろよ」
身支度を調えたハイジが振り返り、裸のままベッドに横たわる僕に顔を向ける。
「……」
何度も中出しされた僕の腹はとうに膨れ、溢れ漏れ出た精液が下肢の間からつぅ、と伝うのを感じる。
……別に、女じゃないから。妊娠する心配などはないけど。
竜一以外のモノを孕んでしまった罪悪感は拭えない。
それが、優しくされた分……余計にモヤモヤと燻る。
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