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第29話

「………」 先程突っ込まれた所に、ハイジの熱く張り詰めたモノが宛がわれる。 それがゆっくりと……慎重に押し込められていく。 「………」 だけど、一度乱暴にされたソコは、傷を負っている以上どんなに優しく扱われても、痛いままだ…… その上ゆっくりとされる事が、返って痛みを助長させてしまう。 いっそ、乱暴に扱われた方が痛みが麻痺する分、行為の間だけは楽だったりする。 「……っ、」 「痛ぇか?」 小さく頭を横に振る。 違う……それだけじゃない。 もう、竜一以外とはしないと誓っていたのに……結局こうなってしまうんだな、という絶望感と諦めが僕を襲い責め立てる。 「良かった……」 ほっとした声。 弱々しい瞳。 プラスチックの様にキラキラと光る白金の髪。 ……そして 左の二の腕に刻まれた、アゲハ蝶の刺青。 「……これ」 その隣には、咲き誇る桜の花。 そして、全体に舞い散る花片。 「あぁ、これか……? 蝶が消えねーから、一緒になっちまったけど……」 あの時……アゲハを憎んでいたあの頃。 ハイジの腕の中で暴れた僕に、アゲハ蝶を消して桜を彫ると……ハイジは優しく言ってくれた…… 「……桜吹雪」 「言っとっけど、遠山の金さんじゃねーからな」 ハイジの口角が少し上がる。 それと同時に、パンッパンッと素早く二度腰を打ち付けてきた。 「……っ、」 「あ、悪ぃ」 ハイジが動きを止める。 そして僕の顔を覗き込み、唇を寄せ、僕の唇、頬、耳朶へと熱を落とす。 「……ううん、平気」 もし若葉の事件がなく、アゲハに会わなかったら…… 多分僕は、また暴れたのかもしれない。 ハイジの逞しい腕の中で アゲハが舞い飛び、桜が舞い散っている。 その光景は美しく、見る人を魅了し虜にする。 ……だけど僕もアゲハも、自分の意志で自由に舞っている訳じゃない。 多分僕達は、生まれた時からこういう運命だったんだろう…… 「……いい子してろよ」 身支度を調えたハイジが、全裸でベッドに横たわる僕の方へと振り返る。 「………」 何度も中出しされた僕の腹はとうに膨れ、溢れ漏れ出た精液がつぅ、と流れるのを感じる。 ……別に、女じゃないから妊娠の心配などはない。 けど、竜一以外のモノを孕んでしまった気持ちは晴れない。 それが、優しくされた分……余計にモヤモヤと燻る。

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