38 / 555
第38話
……ゴホッゴホッ
コットンタオルケットをくるりと体に巻き付け、背中を丸める。
けれど肩口や首筋が空気に曝され、ゾクリと体が震える。
「……冷めちまったけど……」
ハイジがカップ雑炊を僕に突き付ける。
「一口でも食って、ちゃんと薬飲めよ」
「………」
タオルケットから両手を出し、それを受け取る。
「……うん」
答えながら、立ち上がるハイジをチラリと見上げる。
「食べるから、続き……」
「わぁったって」
少し乱暴に答えながら、僕の背後にある大きめの枕を上手く二つ重ねて、ベッド柵に立て掛けた。
「……ほら、ケツ痛ぇだろ?」
「………!」
ハイジの……ばか……
直ぐに目を逸らし、頬を膨らませた横顔をハイジに見せる。
……だけど、言い方はともかく。
こういう気遣いをされると、心を擽られてしまう……
付けたまま膝を立て、踵を引き寄せる。
そうしながら、枕にそっと、背を預けた。
湯気を失ったカップ雑炊。
プラスチックスプーンでひと混ぜした後、少しだけ掬って口に運ぶ。
「……話の続きすンぞ」
それを見届けたハイジは、近くにあったイスを引き寄せて座った。
「二度くれぇかな?
オレを引き取りてぇっつー里親が現れてよ。
……けど、時間かけて築き上げてきた関係を、一瞬でぶっ壊すみてーに……どっちも最終決断で向こうから断ってきたんだよ」
その理由は解らない……
そのうちハイジは、里親の話が来る度に、リンチの口実にしかならないという理由で、最初から会うのを拒む様になっていた。
服で隠れた所に痣を見つけた職員が、ハイジの味方になってくれたのは……それから一年後……
危機を感じた職員は、ハイジの為に尽力を注いでくれたが、その対処はいずれも付け焼き刃にすぎず……結果は伴わなかった。
そんな折、職員の人手不足により民間施設に委託するという話が浮上した。
「少人数でアットホーム、ってのがウリの所でさ……その職員がオレを推してくれて移る事になったんだけど。
………そこがまた、酷ぇ地獄絵図でよ……」
ともだちにシェアしよう!