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第38話

……ゴホッゴホッ コットンタオルケットをくるりと体に巻き付け、背中を丸める。 けれど肩口や首筋が空気に曝され、ゾクリと体が震える。 「……冷めちまったけど……」 ハイジがカップ雑炊を僕に突き付ける。 「一口でも食って、ちゃんと薬飲めよ」 「………」 タオルケットから両手を出し、それを受け取る。 「……うん」 答えながら、立ち上がるハイジをチラリと見上げる。 「食べるから、続き……」 「わぁったって」 少し乱暴に答えながら、僕の背後にある大きめの枕を上手く二つ重ねて、ベッド柵に立て掛けた。 「……ほら、ケツ痛ぇだろ?」 「………!」 ハイジの……ばか…… 直ぐに目を逸らし、頬を膨らませた横顔をハイジに見せる。 ……だけど、言い方はともかく。 こういう気遣いをされると、心を擽られてしまう…… 付けたまま膝を立て、踵を引き寄せる。 そうしながら、枕にそっと、背を預けた。 湯気を失ったカップ雑炊。 プラスチックスプーンでひと混ぜした後、少しだけ掬って口に運ぶ。 「……話の続きすンぞ」 それを見届けたハイジは、近くにあったイスを引き寄せて座った。 「二度くれぇかな? オレを引き取りてぇっつー里親が現れてよ。 ……けど、時間かけて築き上げてきた関係を、一瞬でぶっ壊すみてーに……どっちも最終決断で向こうから断ってきたんだよ」 その理由は解らない…… そのうちハイジは、里親の話が来る度に、リンチの口実にしかならないという理由で、最初から会うのを拒む様になっていた。 服で隠れた所に痣を見つけた職員が、ハイジの味方になってくれたのは……それから一年後…… 危機を感じた職員は、ハイジの為に尽力を注いでくれたが、その対処はいずれも付け焼き刃にすぎず……結果は伴わなかった。 そんな折、職員の人手不足により民間施設に委託するという話が浮上した。 「少人数でアットホーム、ってのがウリの所でさ……その職員がオレを推してくれて移る事になったんだけど。 ………そこがまた、酷ぇ地獄絵図でよ……」

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