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第45話
擦れ違い様、腕組みをし僕を横目で睨みつける。
そして特有の匂いとハイヒールの音を残し、女性が一人部屋を出て行った。
「……バーカ。お前ら何処に目ぇ付けてんだよ」
その後を追う様に、二人…三人…、と女性達が出て行く。
しかし、眼中には無かったんだろう……そんな彼女達に全く目もくれず、ハイジはニヤニヤと口元を緩ませ笑みを漏らす。
女性が全員居なくなると、部屋に残ったのはハイジと僕を除いた男五人。
その中の三人が、僕に興味の色を見せゆっくりと近付く。
パッ
ハイジがピンクの光を消し、本来の照明を点ける。
瞬間、男達の目の中に僕の姿がハッキリと映り込む。
「……あれ、」
「ひ、姫……?」
「……姫ジャン……」
三人の男は、いま目を覚ましたかの様に大きく瞬きをした後、目を見開く。
……え……
見た事のある顔ぶれ。
……それは、懐かしさと共に、溜まり場にいた頃の楽しかった空気をも連れてくる。
驚いてハイジを見ると、それに気付いたハイジが口元を緩ませたまま、僕の肩に腕を回す。
「オレのオンナ。……って事で、こいつにはぜってー手ぇ出すなよ」
テーブルの上には、乱雑されたビールジョッキやカクテルグラス。櫛切りレモンが底に沈んだビンが数本。
酒が相当入っているのか……三人は入り口近くに立つハイジと僕の近くで、飛び跳ねたりじゃれたりして馬鹿騒ぎを始める。
その奥には、先程からソファに座ったまま動かない男が二人……
気になって其方に目を向ければ、相手と視線がぶつかった。
「………っ、!」
瞬間……
ドクンッ、と心臓が大きく跳ね上がる。
「………」
なん、……で……
鋭い眼光……
腕の内側や指先が、動脈を抑えられたかの様にビリビリと痺れる。
足の感覚は無くなり、ちゃんと立っているのかも解らない……
……頭がクラクラする……
「……っと、」
ハイジの腰に腕を回し、そのまま身を預ける。
「……ごめ、ん」
「ソコ座るか」
そんな僕を支え、ハイジが奥へと誘導する。
「……よぉ、姫」
L字の角……ソファの真ん中辺り……
そこから鋭い眼光が向けられ、僕に冷たく挨拶をする。
「元気だった?」
「………」
「楽しかったよなぁ……″あん時″」
口角をクッと吊り上げる。
そして意味深な台詞を吐いた唇が割れ、赤い舌をチラリと見せる。
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