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第46話

……あの時、僕にトラウマを植え付けた主犯…… そいつが今、目の前にいる…… 「……お、太一じゃん」 ハイジが太一に気付き、声を掛ける。 太一の瞳が少しだけ柔らかくなり、ハイジに笑みを返す。 「良かったなぁ、ハイジ。……お姫サマが無事に見つかって」 「………うるせぇ」 「ハハ。……ていうか姫、随分とエロい格好してんじゃん……」 ハイジから僕に視線が移る。 その視線がねっとりとイヤらしく、剥き出しになった僕の太腿を執拗に舐め回す。 「………」 ウイスキーかブランデーか…… そのままグラスを傾け、琥珀色の酒に喉を鳴らす。 ……こいつ…… 体は確かに、あの時の恐怖を思い出してしまっている。 ……だけど、腹の底から煮えたぎる感情に 次第に心が支えられていく……… 「……ハァ?……酔っ払ってこいつに手ぇ出すんじゃねーぞ!」 「バーカ。ヤる訳ねーだろ?……俺は早死にしたくねーからな」 軽口を叩くと、太一は鋭い瞳のまま冗談めかす様な視線をハイジに向ける。 フンッと鼻を鳴らし、ハイジが太一から顔を逸らす。 その瞬間、再びグラスを傾ける太一の口端が僅かに吊り上がった。 ハイジに促され、僕は奥の空いたソファに座る。 その隣に座る男をチラリと見れば、太一と共に僕を輪姦したグループの一人…… ″……リュウさんにボッコボコにされてて……″ その現場を直接見た訳じゃない。 でも、半年も経ってしまえば、そんな傷なんて跡形も無く綺麗になってしまうものなんだろう…… 散らかったテーブルの上を、僕の横に腰を下ろしたハイジが簡単に片付ける。 ……ハイジは、僕と太一達の間に何があったのか……多分知らない…… 隣の男は、チラチラと僕の太腿に視線を落とす。 そして、不自然にソファに着いた手…… その小指の先が、僕の外腿に触れそうな程近い。 「………」 勝手に震えてしまう体…… ……だけど、そこから感情だけが次第に切り離されていく。 ……どういうつもりなんだ…… ハイジを裏切って。 騙して。僕をあんな目に遭わせて。 ……それなのに、何食わぬ顔でハイジと連んでいるなんて…… 怒りで胸中がぐちゃぐちゃに掻き乱される。 ……だけど頭の中は妙に落ち着いていて、冷静になっている自分もいた。 ″お前はオレのオンナだけど、仲間じゃねーんだ。 あんまこっち側に首突っこむな″ 以前……いつだったか ハイジが僕に言った台詞。 ……思い上がっているのは、僕の方かもしれない…… ハイジと太一には、僕とは違う……僕には解らない固い絆で結ばれている…… 太一は、ハイジが自分の女をつまみ食いされた所で関係を解消される様な仲ではない……と自負しているのだろう。 「………」 ヒリヒリとした空間。 ……でも、そう感じているのは……僕だけなのかもしれない……

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