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第47話

「……どした?」 そんな僕に気付いたのか、ハイジが優しい光を含んだ瞳を僕に向ける。 そして堅くなった僕の体を解すかの様に、僕の肩を抱いた。 「ハイジぃ……なに俺らに見せ付けちゃってんの?」 「……ハハハ!」 「姫とシしたいなら、ラブホ行けよ」 馬鹿騒ぎをしている男三人が、先程の仕返しとばかりに軽口を叩く。 「……バーカ。お前らの前でスるかよ!」 口角を上げ、そう返したハイジの手に力が籠もる。 グッと更に引き寄せられ、ハイジの肌の匂いが鼻孔を擽った。 「……お待たせしました」 清潔感溢れるウエイターが二人、部屋に入ってくる。 その手には、数々の料理。 それらがハイジの指示で、僕の目の前のテーブルに並べられていく…… 「……ほら、食え」 大皿に盛られた焼飯。 それをハイジが小皿に取り分けてくれる。 他にカルパッチョ。アボカドのサラダ。マルゲリータのピザ。 「………」 病み上がりの僕には、胃にキツそうなものばかりだ。 「いっぱい食えよ」 「……うん」 湯気と共に、焼飯から香ばしい香りが立ち込める。 それをスプーンに半分程掬えば、乗り切らなかった米粒がパラパラと崩れ落ちる。 それを口に運ぼうとして、止めた。 ふと横を見れば、此方を間近でじっと見つめる、ハイジの瞳…… 「……そんなに見られたら………食べ辛いよ」 「おぅ、……悪ぃ」 口ではそう言うものの、解放する気はないらしい。 愛おしむ様に目元を緩ませ、優しい光を揺らす。 「………」 肩を抱かれた時より、何だか恥ずかしい…… 視界からハイジを消し、掬い取った焼飯をそっと口に含んだ。 その時、一人のウエイターがハイジに近付き、身を屈めて耳元に顔を寄せる。 室内スピーカーから流れる音楽。 馬鹿騒ぎをする三人の声。 それらが邪魔して、僕の耳までは届かない。 「……そうか」 低くそう呟いた後、ハイジが席を立つ。 それに驚いて見上げれば、ハイジが僕に視線を落とした。 「………」 その瞳には、先程まであった柔らかな色はない。 愛おしむ様な優しい光の欠片さえも、もう何処にも見当たらない。 何処までも冷たく、深く……闇色に覆われていく……

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