51 / 555

第51話

……ハイジッ……! 「………」 「おっと……」 前に出ようとした僕の腕を掴み、太一が引き留める。 そして背後から、僕を挟むようにして二の腕を強く掴んだ。 「ハイジに、大人しく部屋で待ってろって言われてんだろ……?」 「………」 「まぁ、見てなよ」 肩口に、太一の顔が近付く。 「……あれが、ハイジの仕事」 ハイジが何かを掴み、男を押さつけたまま腕を振り上げる。 その手にあるものが鋭く光り、尖った金属状のものだと解った。 「………っ!」 それが、勢いよく振り下ろされる。 「……ぎぃやぁぁーっ!!」 悲鳴とも発狂とも取れる、男の叫び声。 しかし……店内に響き渡る激しい音や騒がしい声、雑音に埋もれてしまったのか…… 他の客は全くその異変に気付かない。 キャハハハ…… ワァー!! ……ドゥンドゥン 激しいダンスミュージックに合わせ、体を動かす男女。 果敢にナンパしているのか、サバけたお姉様達にグイグイと押してる若い男性陣。 颯爽とドリンクを運ぶウエイター。 「………」 「ああやって、裏切った奴を制裁したり代理で金取り立てたりしてんだよ」 耳元に寄せられた唇。 吐息が僕の耳裏にかけられ、僅かにそこを熱くさせる。 「………っ、」 周りに気を取られすぎていた…… 気付けば太一の腕が僕の胸の前に回り、パーカーのファスナーを指で摘んでいた。 「……今年入ってすぐ、いきなりハイジが俺らの前に現れてよ…… 分裂したチームの再結成ってやつ?……まぁそんな感じで、また連んでんだけど……」 ジジジ……と下ろされる。 「……姫も感じてんだろ?」 「………」 その手が開かれたバーカーの中に侵入し、カットソーの上から胸を弄られる。 「ハイジが別人みてぇだってよ……」 ……止めろ。 そう叫んで突き飛ばしたいのに、体が硬直して動かない…… 「この首輪、ハイジが付けたんだよなァ」 その手が、胸元から黒革の首輪へと厭らしく滑り上げる。 「セックス中に首でも絞められたか?」 太一の熱い舌が、僕の耳裏に当てられ、いたぶる様にゆっくりと耳を食んだ。

ともだちにシェアしよう!