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第64話
ハイジの匂い。
それがふわっと僕の鼻孔を擽る。その直後に、柔らかな熱が唇に当てられた。
……はぁ、はぁ……
一度緩く離され……直ぐに重ねられる。
ピチャ……クチュ……
ハイジの唇が、僕の唇の上も下も甘く食み、柔く吸っては軽く歯を立てて………
擽ったくて、何だかヘンで。
少しだけ横に傾げれば、逃がすまいとハイジが追いかけて唇を奪う。
何度も角度を変え、何度もキスを重ねれば………僕の唇は濡れそぼり、体に熱情が与えられる。
「……はぁ、はぁ」
その度に漏れる、熱の籠もった吐息。
それがやけに大きく……淫靡な水音と共に僕の鼓膜を擽った。
重ねられた手のひら。
指が絡められ……お互いに握り合う。
僕の頬に触れたハイジの右手は、上気した素肌を撫で、僕の横髪を優しく梳かす。
……好き……
上と下の睫毛の先が、離れない程度に薄く瞼を開ければ……綺麗な白金色の髪と、ハイジの熱く潤んだ瞳がぼんやりと目に映る。
……好きだよ……ハイジ……
しっとりと見つめた後、再び瞼を閉じる。
そして咥内への門戸を少し開ければ、待ち構えていたかの様にハイジの舌先が滑り込んでくる。
「………んっ、」
僕の舌先を見つけ、直ぐに絡めてくるハイジの舌。
そこからハイジの愛液が伝って流れ落ち、僕のと混ざり、溶け合って溢れていく……
………はぁ……あ……
ふ、……ぅん……
熱い吐息が、どちらのものか解らない程交差して混ざり合う。
合わせた掌の隙間………次第に熱が籠もっていき、湿度が上昇していく。
「……ヤベ……」
ハイジが小さく呻く。
「これ以上したら……シたくなっちまう」
熱い息を吐き、堪える様に片目を薄く瞑る。
「………」
重ねたハイジの身体。
その中心部が硬くなり、主張するように僕に当たっていた。
「し、シねぇ!……ヤんねぇって……」
慌ててハイジがそう言い放つ。
顔を真っ赤にして。沢山視線を泳がせて。
「ただ……」
唇を少しだけ尖らせたハイジが、僕でない何処かに視線を定め、静かに口を開く。
「さくらとキスなんてもう、何度もしてんのに……今、初めてしたみてぇで……
なんつーか……心が一つになる、っつーの……?」
「………!」
ハイジの言葉に驚いて、僕は真っ直ぐハイジを見つめた。
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