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第68話

強い刺激に、精神まで引っ張り上げられる。 体中の血液が一気に沸騰し、手足の末端にまで勢いよく押し流される。 頬が火照り、肌がうっすらと湿り気を帯びれば………妖艶に香る、淫靡で甘い匂いが仄かに立ち上がった。 ……はぁ、はぁ、はぁ 肩で息をし、脱力しきった両腕を何とか動かす。 そして、火照りきった顔を隠すように、顔を横に向けたままその両腕をのせた。 ズボンも下着も、全てするりと剥がされる。 僕の腿裏にハイジの手が掛けられ、両膝が腹の方にグイッと押し上げられた。 まだ果てずに張り詰め、鈴口から涎を垂らし、てらてらと濡れる陰茎が、ひんやりとした空気に曝される。 その下にある……幾重にも折り重なって襞になった小さな窄まり。 そこに、熱の籠もったハイジの吐息がかかった。 「………!」 壊される…… 次に来るだろう、快楽の第二波を予見し、ぶるっと身震いした。 怖い……やだ…… ……やだ…… 「………さくら……?」 徐に、僕の足が下ろされる。 ハイジがベッドに手を付いて、ゆっくりと上がってきた。 熱く、硬く、苦しそうに張り詰めた、ハイジの肉茎。 その先端が僕の腿やお腹を掠めれば、先走った液で濡れ広がった。 「さくら……」 天から降ってくる、遠慮がちな声。 柔らかな溜め息をついた後、安心させる様に僕の髪をそっと撫でる。 「もう、止めとこうぜ」 その言葉に驚き、顔を隠した腕を少しだけずらす。 腕の隙間からハイジをチラリと覗き見れば、その表情は想像していたものよりも穏やかだった。 「さくらの甘い味、堪能させて貰ったし……もう充分……」 僕を気遣う、ハイジの綺麗な瞳。 纏うオーラは柔らかで、壊れたと思った雰囲気も、まだ何処か甘い。 「………」 そんな訳、ない…… あそこまでして、途中で止めるなんて…… 直ぐに目を伏せ、頭を傾げたまま首を小さく横に振る。 それなのにハイジは、僕から身体を下ろし、僕の左隣に身体を横たえてしまう。 ……どうして…… 「無理すんなって」 優しくされればされる程、もやもやとしたものが黒く渦巻き、胸中を支配していく。 それと同時に、胸の奥からじりじりとした痺れと淋しさが込み上げた。 顔を隠す腕を、瓦礫が崩れる様に取り外す。 まだ熱いままの頬をハイジに向け、肘枕をするハイジの腕へと手を伸ばした。 その指先が肌に触れた瞬間………自分でも気付かぬうちに溜まっていた涙が、ぽろりと零れる。

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