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第70話 変化

××× あれから僕は、手錠をされていない。 勿論拘束だってされてない。 だけど、黒革の首輪だけは……別。 これだけは、外せない。 ハイジは、仕事現場に僕を連れて行く。 二人の住処であるウィークリーマンションに、僕一人を残しておくのは不安らしい。 でも多分、理由はそれだけじゃない。 自惚れかもしれないけど……僕が傍にいる事で、ハイジの抑止力になっているんじゃないか、って思ってる。 この首輪の様に。 歓楽街。 人々の欲望が渦巻く、眠らない夜の世界。 人を魅了させる妖しい光が、その本能を刺激し、剥き出しにし…… 気をつけなければ、身包み剥がされ、骨の髄までしゃぶり尽くされ、廃棄物の様に捨てられてしまう。 路地裏では、屯する若者達。路上で眠るミニスカのOL。親父狩りにでも遭ったのか、よれたワイシャツ姿のまま倒れているサラリーマン。 その街の一角にある派手なビル。 見上げれば、イケメン揃いの宣材写真が連なる、ホストクラブの煌びやかな看板が幾つも掲げられていた。 ふと隣に立つハイジを見る。電光掲示板から反射した瞳には、不気味な程何の感情も感じられない。 「……こっちです」 煌びやかで眩い店内。 高級な設備……シャンデリアに、ソファ、テーブル。 卓から卓へと移る、高級スーツを身に纏った高身長ホスト。数人のホストがお客を取り囲み、掛け声と手拍子で場を盛り上げるコール。歓声。 何もかもが非日常の別世界……漂う空気や飛び交う声、心なしか匂いさえも僕の住む世界とはまるで違う。 すれ違うのがやっとの狭い通路で、金髪蒼瞳のビジュアル系ホストとすれ違う。 その時。此方に視線を向けた彼の、口の両端が綺麗に上がった。 客商売だから、なんだろう…… だけど、僕の前を歩くハイジには、そんなの関係ないらしい。

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