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第71話 変化
×××
あれから僕は、手錠をされていない。
勿論、拘束だって。
だけど、黒革の首輪だけは……別。
これだけは、外せない。
ハイジは、仕事現場に僕を連れて行く事がある。二人の住処であるウィークリーマンションに、僕一人を残しておくのは不安らしい。
でも多分、理由はそれだけじゃない。
自惚れかもしれないけど……僕が傍にいる事で、ハイジの抑止力になっているんじゃないか、って思う。
この首輪の様に。
歓楽街──人々の欲望が渦巻く、眠らない夜の世界。
人々を魅了させる妖しい光が、その本能を刺激し剥き出しにしていく。
気をつけなければ、身包み剥がされ、骨の髄までしゃぶり尽くされ、廃棄物のように簡単に処分されてしまう。
路地裏では、屯する若者達。路上で眠るミニスカOL。ボッタクリにでも遭ったのか、依れたワイシャツ姿でゴミ捨て場に倒れているサラリーマン。
その街の一角にある派手なビル前で、ハイジが足を止める。見上げれば、イケメン揃いの宣材写真が連なる、ホストクラブの煌びやかな看板が幾つも掲げられていた。
ふと、隣に立つハイジを見る。ネオンを反射した瞳には、不気味なほど何の感情も感じられない。
「……此方です」
煌びやかな店内。
眩い程の豪勢なシャンデリア。鏡張りの壁。革張りの黒いソファ。大理石のテーブル。
卓から卓へと移る、高級スーツを身に纏った高身長ホスト。数人のホストがお客を取り囲み、掛け声と手拍子で場を盛り上げる。
シャンパンコール。歓声。
何もかもが、非日常の別世界──漂う空気。飛び交う声。心なしか、匂いさえも僕の住む世界とはまるで違う。
すれ違うのがやっとの狭い通路で、金髪蒼瞳のビジュアル系ホストとすれ違う。
その時、此方に視線を向けた彼の口の両端が、綺麗に持ち上がったのが瞳に映った。
「……」
客商売だから、なんだろう……
だけど、僕の前を歩くハイジには、そんなの関係ないらしい。
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