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第72話

何でこんなにドキドキするんだろう…… 良く、解らない。 解んないけど…… ハイジが、格好良く見える。 さっきのホストなんかには負けないくらい…… もし、ハイジがホストをやってたら……きっとナンバーワンなんじゃないか、って思う。 髪が同じプラチナブロンドだけど、ハイジの方が数倍綺麗だし、纏うオーラも全然違う。 箔が違う。 抱えているものがある分、惹きつけられる。 無感情の瞳に捕らえられれば、底冷えする程震えてしまうのに。 とろとろの蜂蜜の様に甘く、底なしに優しくされたら…… きっと、どんな女性だって…… そう思いながら、胸の奥がじりじりと焦がれていくのを感じる。 カチャンッ。 ドアが完全に閉まり、姿が見えなくなる最後の最後まで…… 僕は、ハイジを目で見送った。 「………」 改めて、部屋の中を見回す。 奥の壁一面には、煌びやかな光を放つお洒落なドレッサー。その前には四人掛けのテーブル一式。 入り口側の壁にはロッカーとゴミ箱があり、冷蔵庫も置かれていた。 ……部外者の僕が、こんな所にいていいんだろうか…… そんな不安に駆られながらも、テーブルの椅子を引いて座る。 ……でも、あのフロアの一角で待つよりは、こっちの方が静かで落ち着く。全然いい。 塵ひとつない綺麗なテーブルに、身を預けて目を瞑る。 冷たくて、気持ちいい…… 最後に見た、ハイジの瞳が忘れられない。 あの鋭い瞳で見つめられただけで、体に緊張が走り……指先が震えて冷えていくのに、胸はドキドキして……カッと熱くなるなんて…… ハイジにこんな感情を抱いた事なんて、今まであっただろうか…… 先程生まれた熱が、ひんやりとしたテーブルに吸い取られていく。 そんな心地良さを感じながらうとうとし始めた時、突然ドアが開いた。 「……じゃあ、黒アゲハに可愛がって貰ってたんだァ」 その第一声に、一気に現実へと引き戻された。

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