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第75話
「……えっ」
新人眼鏡ホストは、先輩童顔ホストの言動に腰が引ける。
「そ、そんな事、……できません」
「……は?何言ってんだよ。先輩の言う事は絶対だろォ」
高圧的な態度に圧され、眼鏡が僕の頭の方へと回る。
そして、おずおずと手を伸ばし、僕の両手首を掴むと、手前に引っ張って上から押さえつけた。
「……そのまま押さえてろよ」
男の手が、僕の服の裾をぺらりと捲り上げる。
その瞬間……
立ち込める、芳醇な甘い香り……
雄を誘う………淫靡な匂い。
細くて白い体。
少し括れたように見える細い腰。形の良い臍。
息をするたびに上下する、あばら骨。
綺麗に浮き出た、鎖骨……
その白い柔肌なキャンパスの上に、幾つも散りばめられた……赤い痕。
胸元から臍の下まで………二つの小さな蕾も含め、春の風に誘われひらひらと舞い散った、桜の花弁のように美しく……
「………」
ライオンヘアが、ごくっと喉を鳴らす。
「……マジかよ……」
動揺したように視線を泳がせる。
中々落ち着かずにいたそれが、真っ直ぐ自身の下肢へと向けられた。
有り得ねぇ………。そう思ったのだろう。
しかし、下半身は素直に反応を示し、硬く膨らんで首を擡げ………布地を高く押し上げ主張していた。
チッと舌打ちし、片眉をぴくりと動かす。
「……あの、」
先輩の様子がおかしい事に気付いた眼鏡は、そわそわと落ち着かない。
「そのまま、お前………押さえてろよ……」
もう一度静かにそう言い、眼鏡に念押しの目を向けた。
「………」
頭の芯が、ビリビリとまだ痺れてる。
鼻骨にまで響いた様で、鼻の奥から血が湧いた様な感覚が襲った。
痛い………
鈍器で殴られたように、ズキンッ、と頭痛がし、次いで背中からじわっと冷たさが広がった。
まるで水溜まりの上に横になったみたいに、ヒヤッとした嫌な感覚。
遠くからぼそぼそとした声が聞こえ、少しずつ現実が、折り重なってくる。
「先輩、早くして下さい」
「……うるせーなァ」
ぴくりと痙攣した指先。
そこから少しずつ感覚が蘇る。
………え………
胸元に、違和感……
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