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第76話

「……え……」 新人眼鏡が、先輩ライオンの言動に腰が引ける。 「そ、そんな事、……できません」 「……は? 何言ってんだ。先輩の命令は絶対だろォ?!」 高圧的な態度に圧され、イスから崩れ落ちた僕に近付く。頭の方へと回り、怖ず怖ずと手を伸ばして僕の両手首を拾うと、引っ張って床に縫い付ける。 「……そのまま押さえてろよ」 男の手が、僕の服の裾をぺらりと捲る。 その刹那──むぁっと立ち込める、芳醇な甘い香り。 雄を誘う、淫靡な匂い。 線の細い身体。陶器のように白い肌。少し括れたように見える細い腰。形の良い臍。 更に捲り上げれば、露わになるピンク色の乳首。息をする度に上下するあばら骨。綺麗に浮き出た鎖骨。 柔肌なキャンパスには、幾つも散りばめられた──赤い痕。 胸元から臍の下辺りまで。春の風に誘われ、ひらひらと舞い散った桜の花弁のように美しく…… 「………」 ライオンヘアが、ごくんっと喉を鳴らす。 「……マジ、かよ……」 動揺したように泳がせていた視線が、真っ直ぐ自身の下肢へと向けられる。 有り得ねぇ………。そう思っているのだろう。 しかし、下半身は素直に反応を示し、硬く膨らんで首を擡げ………布地を高く押し上げ存在を主張している。 チッと舌打ちし、片眉をぴくりと動かす。 「……あの、」 先輩の様子がおかしい事に気付いた眼鏡が、そわそわと落ち着かない様子で声をかける。 「そのまま、押さえてろよ……」 静かにそう言い、眼鏡に念押しの目を向けた。 「………」 頭の芯が、ビリビリと痺れる。 鼻骨にまで響いた様で、鼻の奥から血が滲み出たような感覚が襲う。 痛い……… 鈍器で殴られたように、ズキンッと頭痛がし血の気が引いていく。と同時に、背中からじわっと冷たさが広がった。 まるで、水溜まりの上に横たわったよう。ヒヤッとした、嫌な感覚。 遠くからぼそぼそとした声が聞こえ、少しずつ現実の層が折り重なっていく。 「先輩、早くして下さい!」 「……チッ。うるせーなァ」 ぴくりと痙攣した指先。 そこから波紋のように感覚が蘇る。 ………え……… 胸元に、違和感……

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