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第78話

……飼育……? この男の吐く言葉に、嫌悪感を覚えた。 それだけじゃない。 さっきから、僕を挑発するような態度ばかりだ…… ……なんなんだ……こいつ。 「あれ。心外だって顔してるけど。 ……もしかして、自分がハイジの特別な存在だとでも思ってた?」 「………うん。そのつもり」 目の前のホストを拒絶するように、じっと見据えながら答える。 動じない。決して僕から目を逸らさない。その手を払い除けない。 「そっか。……もうそこまで洗脳されちゃってるのか」 「……え」 緊張を解くように……ホストが深い溜め息をつき、表情を崩す。 瞬間、その瞳に明るい色が宿り、親近感を湧かせ……僕との距離を詰めた。 今までの態度は、全部演技……? 僕を試してた……? ……だとしても。 洗脳という四文字がどうしても引っ掛かって、嫌悪感は拭えそうにない。 「……ここまでになる前に、どっかで誰かから耳にした事なかった?」 スッと薄い唇が、僕の耳元に近付く。 「部屋に誑し込んだ女性達に、何だかんだ言いくるめて……この首輪を付けさせて…… ……いい具合に従順な奴隷に成り下がったら、そういう趣向の顧客に出荷してるって話」 ふわり、と仄かに漂う薔薇の香り。 ホストの身に纏った香水の匂いなんだろう。 しかし、その高貴で優雅な甘い香りとは裏腹に、口から飛び出す言葉は物騒なものばかりだった。 「……そんな事……!」 「見た所、まだ綺麗だけど。……そのうちされるよ?………暴力」 僕の反応を楽しんでいるのか……片側の口角が少し上がる。 だけどその瞳は真っ直ぐ僕を捕らえ、何処か真剣で………とてもふざけたりしている様には見えない。 「あんまり信じてないみたいだけどさ。 俺、アゲハとは前の店では同期で、仲間で、友達で。 アゲハが守りたいって言ってた弟くんだから、わざわざこうして危険を冒してまで密告してるんだよ? ……まぁ、信じるも信じないも、君の勝手だけどね……」 そう言って視線が揺れた後、直ぐにまた口を開く。 「………話してあげるよ。 前に、ハイジがここに連れて来た女性の事………」

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