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第82話 真相
×××
いつの間にか降り出した雨。
その雨足は次第に強くなり、捕まえたタクシーに乗り込んだ頃には、バケツをひっくり返したような激しさへと変わっていた。
ゲリラ豪雨はものの数分で収まり、車を暫く走らせれば、サァッと静かな雨音へと変わる。
夜の街に煌めく、雨の中のネオン。濡れた路面に反射する様々な光。それらが幻想的に滲んで、僕の瞳 に映る。
「……アイツと、なに話してたんだ」
運転席の後ろに座るハイジが、僕の方を見ず静かに口を開く。
その横顔は険しく、何処か一点を見据えていた。
「……」
バックヤードを出ようとする麗夜がドアを開ければ、その向こうに立っていたのは──ドアノブに手を伸ばし掛けていた、ハイジ。
『お疲れ様です』
頭を軽く下げ、ハイジの横をスッと通り過ぎていく麗夜。それを尻目に見送るハイジ。その眼が、テーブルの足元にへたり込む僕の目と合った瞬間──麗夜の肩を掴み、力尽くで引っ張り戻す。
『……オイ、お前。さくらに何をした!』
『なにって……。俺は別に、なにも……』
『───トボけてンじゃねぇよ!』
ガンッ、
閉まりかかったドアに麗夜を叩きつけ、威嚇するように顔を近付ける。そのハイジを見据えながら、口角を余裕気に持ち上げた麗夜が、爽やかな営業スマイルをしてみせる。
『テメェ──!』
それが気に食わなかったのだろう。麗夜の襟元を捻り上げるように掴み、衝撃で開いたドアに麗夜の背中を強く押し付け、吊り上がった眼に邪鬼が孕む。
『………ハイジ』
緊迫する空気──
今にも殴りかかりそうなハイジに、そっと声を掛ける。
『何も、されてないから……』
ハイジを見つめながら、怖ず怖ずと立ち上がる。
『用事が終わったなら、……早く帰ろう』
床に転がったイスを丁寧に直し、豹変してしまったハイジに近付く。
『……』
僕を横目で見たハイジが、投げやるように麗夜を掴む両手を離す。その手をそっと拾い上げれば、その指先が僅かに震えていた。
「……」
……だけど。ハイジの中ではまだ、消化しきれずにいたんだろう。
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