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第87話

「どんな話を……した」 耳元で響く、冷徹な声。 恐ろしいほど落ち着き払っていて、そこに一切の感情なんて、感じられない…… 「………ッ、」 噛んだのは、警告だ。 正直に答えなければ──食われる。 震える身体。滲む冷や汗。 感覚を失った指先を丸め、震えを止めようと握り締める。 ………怖い。 ピンと張り詰めた空気。 息が、できない…… 首輪を戻され、ハイジの鼻先が僕の横髪を掻き分けながら、耳裏を(くすぐ)る。 「……あのホストと」 震える耳に歯を立て、言い終わるか終わらないかのうちに──後頭部の髪を鷲掴みにし、勢いよく前に押し倒す。 ───ゴッッ、 床に叩きつけられる、鈍い音。 鼻の奥がジン…と痺れ、潰されたような鈍痛が襲う。そこから生温かなものが溢れ……鉄の味がした。 ゴッ、ゴッ──ッ、! 更に二度。顔面を叩き付けたハイジがそのまま床に強く押さえ付け、僕の下腹辺りにもう片方の腕を差し込んで腰を高く持ち上げる。 その手際の良さ。冷静な対応。 カッとなったら手が付けられない──僕の知ってるハイジとは、少し違う。 怒りに任せている、というよりも、怖いくらいに落ち着き払っている。 まるで若葉が、バタフライナイフを持って追い掛けてきた時のように。 「………」 痛みでじん…と痺れる鼻。 くらくらする脳内。 それでも、懸命に思考を巡らせようとする。 その間にも、ハイジは動けない僕を思い通りにしていく──ショーパンと下着を一緒に摺り下ろし、お尻を突き出したような格好にすると、首根っこを押さえながら、掴んだ僕の左手首を肩甲骨の方へと捻り上げる。 ……ゃ、だ…… 「……ハ、イ……ジ」 上擦りながらも、やっとの思いで喉から声を絞り出す。咥内にできた血溜まりを、飲み込めずに吐き出して。 もしかしてハイジは……わざとこの部屋の鍵を掛けなかった……? 寝たふりをしてた……? 僕がどうするか、試すために……… 肉付きの悪い臀部(でんぶ)の間に当てられる熱芯。それが、なんの躊躇もなく強引に捩じ込まれる。 「───ぅあ″ッ、!!」 慣らされていないソコは、当然受け入れられる状態ではなく──メリメリメリッ、と音を立てて裂ける。 ……い、た…… いたい……痛いっ、!…… 床についた手をギュッと握り、止ってしまいそうになる呼吸を浅く、何度も繰り返し……その痛みにひたすら耐える。 「………あ、…ぁ″……ッッ!」 抽挿される度──:夢(うそと現実(まこと)の境界線が、曖昧になっていく……

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