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第86話

……ハイジ…… 「どんな話……したんだ?」 声のトーンがいつもと違う。 何にも動じていない、落ち着いた声。 冷酷で、何の感情も載せられていない…… 「………っ、」 歯を立てたのは、警告だ。 正直に答えなければ……食われる。 怖い。 ピンと張り詰めた空気。 呼吸すら、まともにできない。 鼻先で僕の横髪を小さく掻き分けながら、嬲るように耳裏を擽る。 「……あのホストと」 言い終わるか終わらないうちに、後頭部を鷲掴みにされ……そのまま勢いよく前に倒される。 ゴッ、という鈍い音。 次いで床に肌が貼り付く音。 躊躇なく僕の顔面を床に叩きつけ、上から押さえ付けたハイジは、もう片方の手を僕の腹に回し、容易に腰を持ち上げる。 その手際の良さ、冷静な息遣い。 ……カッとなったら、手が付けられない…… それとは、違う。 怒りに任せている、というより……怖いくらいに落ち着いている。 若葉が、バタフライナイフを持っていた時のように。 「………」 痛みでじん…と頭の芯が痺れる。 それでも懸命に、思考を巡らせていた。 その間にも、ショーパンと下着を摺り下ろされ、お尻を突き出した格好にされてしまう。 いや、だ…… 「……ハ、イ……ジ……」 上擦る息のまま、声を絞り出す。 鼻の奥がツンと痛み、喉に生温かなものが流れ落ちて……鉄の味がした。 もしかしてハイジは……わざと鍵を掛けずに……? 眠ってなんか、いなかった……? 僕がどうするか、試すために…… 上から首根っこを押さえ付けられたまま、左手首を掴まれ、肩甲骨へと捻り上げられる。 肉付きの悪い双丘の間にハイジの熱芯が当てられ、それがなんの躊躇もなく、強引に僕に捩じ込まれた。 「……っ、!!」 慣らされていないソコは、当然受け入れられる状態ではなく……メリメリと音を立てて裂ける。 ……い、た…… いたい……痛いっ、!…… 床についた手をギュッと握り、止まりそうになる呼吸を浅く何度も繰り返し……その痛みにじっと耐える。 抽挿される度── 嘘と本当の境界線が、曖昧になっていく……

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