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第93話
縋るように、真っ直ぐハイジを見つめる。
「……クスリだけじゃねぇ。詐欺の受け子もやったし、……風俗嬢の斡旋だって……」
「……」
人を一人……いや、二人分を処理する為の代償は高く。麻薬を売り捌くだけには留まらなかったらしい。
龍成の先輩であり、恩人でもある菊地という人物──半グレを紹介され、ハイジはそこで受け子や売春斡旋等をやっていたという。
「捨て駒みてぇなコトやってるうちに……気付けば、このザマだ」
「………」
……僕の、せいだ……
僕があんな所に居なければ……声なんて、掛けられなければ……
そしたらハイジは……チームの仲間と、今でも───
次々と押し寄せる罪悪感。其れ等に圧迫され、胸が苦しくなる。
楽しかった日々。
みんなで走って、バカやって………多分、あの時が一番自由で、人生がキラキラと輝いていた気がする。
浜辺ではしゃぐ、チームの仲間達。
その姿を、縁石に座って遠くから眺める僕。
今すぐあの日に戻って、全てをやり直したい。
ハイジを……これ以上、苦しめたくない………
「……ンな目で、見んなよ」
ハイジが、僕を見下ろす。
柔らかな目元。
僕の不安を払拭するかのように、形の良い唇の端が緩く持ち上がった。
「……この大麻 だけどな。
これで逃亡資金を集めてンだよ」
僕から視線を外したその先……LEDの光を浴びる大麻を見据えながら、ハイジが静かに呟く。
「最初はクスリの常習者 に値段吹っ掛けて、そっからバレねぇ程度に少しずつくすねてたンだけどな。……全然貯まんねぇし。時間も全然足りねぇし」
「……」
「で。困ってた所に、金儲けの話を持ち掛けてくれた人がいてさ……」
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