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第93話
それが、先程行ったホストクラブのオーナー。
バックには同じ大友組……龍成がケツモチ兼奴隷嬢を沈めているという、会員制SMクラブのオーナーに、乾燥大麻を安価で横流ししている。
それを、手の掛かる製造……栽培、乾燥作業を請け負う仕事をやらないか、と話を持ち掛けられ、二つ返事で引き受けたのだという。
「……ハナから信用なんかしてねぇ。
向こうはどうせ、『龍成の狂犬』とか言われてるオレの境遇に同情するフリして、甘い顔して近寄って……餌付けして手なづけてるつもりだったんだろ。
……でも、利害一致っつーの?
オレも龍成さんにバレねぇように手っ取り早く金貯めたかったしな……」
″ クスリだよ ″
″ 奴隷に飼育した女と一緒に、売り捌いてる ″
麗夜が僕に教えてくれた情報は、あながち間違いではなかった。
「まだ二人分には、全然足りねぇけど………もう、時間がねぇ……」
「………」
……奴隷嬢。
首輪にそっと触れる。
その様子に気付いたハイジは、小さく息を飲み……躊躇いながら、僕のその手の甲にそっと掌を重ねた。
「………痛かった、よな」
ビクンッと体が勝手に震える。
怯えるつもりなんて、全然無かったのに……
「悪ぃ。……疑って……傷つけちまって。
……さくらが、オレを裏切る筈ねぇのに」
「………」
ハイジの指先が、僅かに震えている。
重ねた僕の手を包み、きゅっと柔く握った。
嫉妬……だけじゃない。
ハイジは……麗夜にある事無い事吹き込まれた僕が、隠れてコソコソと物的証拠を探し出そうとしているのではないか……と勘ぐったのだろう。
ハイジの優しい声、温もり。
それに縋りつくように、僕は唇を小さく動かした。
「……ハイジ」
「ん?」
柔く開いた僕の瞳を包み込むように、潤んだハイジの瞳が見下ろす。
「………本当は、僕を……奴隷にするつもり……だったの……?」
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