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第100話 *
×××
……シャラ、
首輪の鎖が揺れる。
その鎖を繋ぐ南京錠。その中央に大きめの鍵穴。その鍵の持ち主は──ハイジ。
痕を隠す為でも、抑止力でもない。
僕が、ハイジの所有物だという証──
「……それ、美味しい?」
カウンター前に座ってお茶漬けを啜っていると、その向こう側から女性が話し掛ける。
「……」
落ち着いたカラーのワンレンボブ。
身体のラインを強調した、七分袖のワンショルダーのニットワンピース。
化粧や声、纏う雰囲気から、他の従業員の女性と比べ、大人びていてクールな印象がした。
チラリと隣を見れば、ひと席空けた向こうに座るスーツ姿のサラリーマン。
カウンターを挟んだその対面には、明るく優しげな笑顔を見せるセミロングの女性。
肩と臍を大胆に露出させた、オフショルダーのショート丈。
ここは、ガールズバー……という所らしい。
お客と酒を交わしながら会話を楽しむもののようだけど……僕にはキャバクラと何が違うのか解らない。
あの日以来、久しぶりの外出。
ホストクラブとは違って、バー店員が女性だからと気を許したのだろうか。僕をバーカウンターの端に座らせ、適当に注文し『ちゃんと飯食えよ』と僕の頭を撫でたハイジが、足早に店の奥へと消えてしまった。
「……」
「ねぇ、君……年いくつ?」
ワンレンボブのクールなお姉さんがカウンターに片手を付き、僕の顔を覗き込む。
「どう見ても……子供だよね?」
口の端を僅かに持ち上げただけで、そこに笑顔はない。
メイクによって作られた大きな瞳の奥は、何処までも冷め……何でこんなガキがここにいるんだと言わんばかりに眉根を寄せる。
「………そうだけど」
別に、こういうのには慣れてる。
学校へ行けば嫌というほどクラスメイトから向けられる……僕を排除しようとする目付き。
「君は、何でここにいるのかな?
パパとママは?………あ、はぐれて迷子にでもなっちゃったのかなぁ?」
僕の態度が気に入らなかったのだろうか。小馬鹿にしたような言葉が返ってくる。
「……」
その視線を静かに外し、お茶漬けと共に出されたミネラルウォーター入りのグラスを口にする。
と、その瞬間──サラリーマンと僕との間に、スッと人影が割り入ったのが解った。
「こいつ連れて来たの、俺」
人懐っこい、柔和な笑顔。
隣の空席に腰を掛けたその人は、何処かで見た事のある顔立ちをしていた。
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