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第99話

大学生位の爽やかな笑顔…… 目尻が垂れ、柔らかな印象を与える……浅間に似た…… 「……え、吉岡の連れ?」 少し驚いた様な、諫める様な声。 見上げれば、ワンレンボブの彼女が更に眉根を寄せ、隣に座る吉岡と僕を交互に見た。 「……一体、どういう関係?」 訝しげに見る彼女に、吉岡は変わらぬ笑顔でサラリと答える。 「隣人関係……かな」 「……え、何それ」 意味が解らない……と彼女が吉岡に詰め寄る。 「じゃー、アコちゃんもこっち来る?」 尖った視線を向ける彼女に、それすらも柔軟に包み込んでしまう笑顔の吉岡が、自身の太腿を二回叩いた。 「吉岡のここ、空いてるよ」 「……は?!……バカ」 吉岡の隣に座るサラリーマンをチラリと見た後、吉岡のそこに視線を落とした彼女……アコが冷たい視線を送り唇を尖らせた。 「………」 そんなやり取りを他所に、僕は驚きを隠せず吉岡の顔をじっと見る。 ……スーパーで一度会っただけの……アパートの隣人…… たったそれだけなのに……どうして僕のパーソナルスペースに平気で踏み込んでくるんだろう……この人。 「……ん、どうかしました?」 アコがツンッとそっぽを向き、カウンターから離れていくのを見送った吉岡は、僕にじっと見られている事に気付いて爽やかな笑顔を返す。 それにハッとして視線を外せば、吉岡はカウンターに両腕を置き、下から僕の顔を覗き込む。 「ていうか。 ……どうして逃げないんでしょう」 「………!」 この人、まさか知ってて…… 人懐っこい笑顔……しかしその瞳は何処か尖るものを感じる。 「逃げるなら、今だと思いません?」 口端をクッと上げると吉岡は体を起こし、黒目だけを動かして店のドアを指した。 「………」 逃げる……とは、そういう意味か。 ハイジが離れている今、逃げ出すには絶好のチャンスだよ………とでも言いたいのだろう。 でも僕は、ハイジから離れたりしない。 僕はハイジと逃亡して……一緒になるんだから。 「……それさ、上手く隠してるつもりみたいだけど……暴力振るわれたんでしょ?」 片肘を付き、体を斜めにして再び僕の顔を下から覗き込んだ。

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