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第102話
……ジャラッ
黒革に飾られた鎖が、小さく揺れる。
その微かな音を消すように、片手でそれを握り締めた。
「………」
この首輪の下にある、ハイジに付けられた圧迫痕。
その形通りに強く締め付けられ、息苦しさと眩暈に襲われる。
「……さくら」
「──!」
ビクッと体が大きく震えた。
「帰ンぞ」
肩に手を置かれ、振り返る。
「………」
……そうだ。
僕は、ハイジのもの、だ……
白金の髪が揺れ、威圧感がありながらも何処か熱の籠もった双眸が、僕を射抜く。
そう、思い知らされる──
「……うん」
先程とは違う心臓の鼓動。
ドクドクと激しく鼓動し、媚薬を飲まされた時みたいに頭がクラクラする。
喉が渇き、瞳は潤み、蕩けきってしまっているのを自分でも感じる。
絡まる視線。
ハイジから………目が離せない。
「……今日は、さくらに挿れてェ」
「………」
屈んだハイジが僕の耳元に唇を寄せ、熱っぽく囁く。
ただそれだけなのに、胸がキュンと締め付けられ……下肢が疼いてしまう。
まだ完全に傷が治っていない為、キスや愛撫はあったものの……あの日以降、本番行為は避けていた。
こくん、と頭を小さく縦に揺らす。
それを確認したハイジの瞳が緩み、口角が片方だけ持ち上がった。
「………」
……ハイジ……好きだよ。
好き……
ハイジの全てが、好き……
だから……僕をハイジの好きに、して……
小さく震える指先。
左手を右手でキュッと摑むと、蕩けた瞳でハイジを見上げながら立ち上がった。
「……そろそろ、さくらをクラブに卸せと指示が出た」
ベッドに倒され、顔の横に両手を付いて見下ろすハイジの口が動く。
「もう……限界だ。
資金はまだ、充分集まってねぇけど………」
潤んだ瞳のまま、ハイジが僕に口づけをする。
柔く触れた後、僕の唇をこじ開け……舌が半ば強引に侵入してくる。
……もうすぐ、だ……
もうすぐ僕は、ハイジと……何処か遠くへ……
ハイジの舌が僕に絡まりつき、吸い上げられ……キスが深くなっていく。
ハイジの掌が、僕の肘から手首へと滑らせるように這い上がり、僕の掌を見つける。
その指を交互に絡めると、どちらからともなく柔く握った。
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