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第103話
もう片方の指先が、僕の鎖骨にそっと触れる。
自分が付けた痕を確かめるようになぞり、同じ場所なのだろう………ハイジがそこに柔く口づける。
ピクンッ……
触れた所が、熱い。
「……ハイジ」
緩く瞳を開ければ、サラリとした白金色の綺麗な髪が目に飛び込む。
思わず、自由な方の手でその髪に触れ……指先にそっと絡めた。
「……ン?」
僕の呼びかけにか、髪を触れられたからか………反応したハイジが、少し顔を上げて此方を見た。
「少し……話しても、いい?」
「………」
布擦れの音と共に、ハイジが少し上がりながら体を起こす。そして表情の細部から精神の深部を見透かすかのように、黒い瞳がジッと僕を見下ろした。
「……何だ?」
僕の雰囲気を瞬時に感じ取ったのだろうか。その瞳は、何処か冷たく僕の角膜に映った。
すうっ、と細く浅く息を吸い……ゆっくりと瞬きをする。
全身が心臓になったかのように、バクバクと落ち着かない……
……でも……ちゃんと話さなくちゃ………
「……僕、ね………チームの溜まり場から出た後………色々あって……」
首を締められた時みたいに、声が……上手く出てくれない。
上擦るように息を吐き、もう一度浅く息を吸い込む。
「……僕は……竜一の、オンナに……なって……」
逸らせない瞳。
みるみる尖る眼光。
ハイジの瞳の奥が闇色に変わり、次第に濁っていくのを感じる。
「………」
もしかしたら、隠し通した方が良かったのかもしれない。
もし言うとしても……今がその時じゃなかったのかも……
ここに来て、手足の先が震え出してしまう。怖じ気ついてしまう。
いつまた首を絞められるか……解らない恐怖──
「……竜一に……用意して貰った、アパートに暮らして……
……竜一の帰りを、待って……」
ここに初めて来た時、最初から、ちゃんと言えば良かった。
「それから、時々……アパートに帰ってきた竜一と、僕は……」
「……言うな」
「──!」
薄く瞳を閉じたハイジが迫り、僕の唇を唇で塞ぐ。
そして繋がった指に力が籠められ、ギュッと強く握られた。
侵入した舌が僕の舌を絡め、強く吸い上げ……甚振る様に咥内を舐る。
……ハイジ
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