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第105話
もう片方の指先で、僕の鎖骨にそっと触れる。
自分が付けた痕を確かめるようになぞり、同じ場所なのだろう……ハイジがそこに柔く口付ける。
ピクンッ……
触れた所が、熱い。
「………ハイジ」
緩く瞳を開ければ、サラリとした白金色の綺麗な髪が目に飛び込む。
思わず、自由な方の手でその髪に触れ……指先にそっと絡める。
「……ン?」
僕の呼びかけにか、髪を触れられたからか……反応したハイジが、少しだけ顔を上げ、此方を見る。
「少し……話しても、いい?」
「………」
布擦れの音と共に、上体を起こしながらハイジが顔を近付ける。そして、表情の細部から精神 の深部を見透かすかのように、黒い眼がジッと僕を見下ろす。
「……何だ?」
僕の雰囲気を瞬時に感じ取ったのだろう。その瞳は、何処か冷めたような色に映る。
「……」
すうっ、と細く浅く息を吸い……ゆっくりと瞬きをする。
全身が心臓になったかのように、バクバクと落ち着かない……
……でも……ちゃんと、話さなくちゃ………
「………僕、ね……チームの溜まり場から出た後………色々あって……」
首を締められた時みたいに、声が……上手く出てくれない。
浅く息を吐き、上擦るように吸い込む。
「……僕は……竜一の、オンナに……なって……」
逸らせない瞳。
みるみる尖る眼光。
ハイジの瞳の奥が闇色に変わり、次第に濁っていくのを感じる。
「………」
もしかしたら、隠し通した方が良かったのかもしれない。
もし言うとしても……今がその時じゃなかったのかも……
ここに来て、手足の先が震え出してしまう。怖じ気ついてしまう。
いつまた首を絞められるか……解らない恐怖──
「……竜一に……用意して貰った、アパートに暮らして……
……そこで、竜一の帰りを……待って……」
ここに連れて来られた時、最初からちゃんと言えば良かった。
「それから、時々……アパートに帰ってきた竜一と……」
「……言うな」
「──!」
薄く瞳を閉じたハイジが迫り、僕の唇を唇で塞ぐ。そして繋がった指に力が籠められ、ギュッと強く握られる。
侵入した舌が僕の舌に絡み、強く吸い上げ……詰る様に咥内を弄る。
……ハイジ……
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