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第106話

不意に口から引き抜かれ、髪を摑まれたまま頭を後方へと強く引っ張られる。 強制的に上向かれた僕の顔を、何の感情もない双眸が捕らえた。 ガッッ…… 一瞬、だった。 顎と耳の間のフェイスラインに、ハイジの堅い拳が振り下ろされる。 ミシッ、と骨が軋む音。痛み。 そのまま殴り込まれ、拳の向かう方へ顔が振り切れた。 瞬間── ガツンと強い衝撃が脳に響く。 脳しんとうを起こしたかのように。 髪は掴まれたまま……ブチブチと何本か抜け切れる。 ぐわん、と脳が強く揺れてるせいか、頭皮の痛みまで神経が回っていない。 何とも奇妙な感覚。 ……はぁ、ぁ…… 口から、唾液だか何だか解らないものがつぅっ、と垂れ落ちる。 「……痛ぇよ」 「………」 「歯ァ立てんな、っつったろ」 ぶるっ、と体が震える。 ………ハイジ、……だけど…… ハイジじゃ……ない…… 「……は、ぃ……」 小さく口を動かした後、乱れた髪をそのままに顔を上げる。 瞼にかかる前髪の間から見える、ハイジの顔。口角を片方だけ吊り上げ、瞳には未だに深い闇が支配していた。 目の前にそびえ立つ、太くて赤黒い……ハイジの凶器。 下腹に付くほど反り上がり、色んな液に塗れてらてらと光っている。 その存在感に、再びブルッと身震いが起こった。 目と鼻の先で大きく口を開け、舌を少し出し、迎え入れる準備を整える。 「………」 震えてしまう手── 手錠された状態で、ハイジの下肢にそっと手を添える。 …好き……ハイジ、好き……… ………好き……だよ…… 舌先で裏筋をゆっくりと舐め上げ、先端を咥え込んで優しく包み込む。 薄く瞼を閉じ、咥内で張り詰めていく怒張を、喉奥まで導いて受け入れる。 ……僕には……ハイジしか、いない…… ハイジ……だけ…… クチュッ、ちゅっ…… 「……ンっ……」 卑猥な水音に混じる、ハイジの鼻から漏れる小さな矯声。 その声が聞こえる度に、体の深部からゾクゾクッと快感が駆け昇る。 感じてくれている事に、酷く安堵する。 キャンディを舐めるように、棒のついた溶けかけのシャーベットをしゃぶるように……舌で転がし、吸い上げ……先走った液をコクン、と飲み込む。 「………はぁ、ッ…」 ハイジの、熱い吐息。 髪の隙間から覗き見れば、恍惚とした表情に変わっていた。

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