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第108話

「……ッ、」 不意に。口から怒張が引き抜かれ、髪を摑まれたまま後方へと強く引っ張られる。 強制的に上向かれる僕の顔。何の感情もない双眸が、それを捉える。 ガッッ── 一瞬、──だった。 拳が振り下ろされ、顎先に近いエラの部分に強い衝撃が走る。 骨の軋む音。鈍い痛み。 手加減などなく──振り切った拳の向かう先へと、顔が吹っ飛ぶ。 「………!」 脳内に響く衝撃。 まるで、脳振盪(のうしんとう)を起こしてしまったかのよう。 掴まれていた髪が、ブチブチと何本か抜け切れる。だけど、鳴り響くお堂の鐘の真下にいるかのように、ぐわんと大きく脳内が揺れ── 何とも奇妙な感覚。頭皮の痛点にまで、神経が回っていないみたいだ。 ……はぁ、ぁ…… 口の端から、唾液だか何だか解らない……何かがつぅっ、と垂れ落ちる。 「……痛ぇよ」 「………」 「歯ァ立てんな、っつったろ」 酷く冷たい声。 ぶるっ、と身体が震える。 ………ハイジ、……だけど…… ハイジじゃ……ない…… 「………は、ぃ……」 小さく唇を動かした後、乱れた髪をそのままに視線を上げる。 瞼に掛かる前髪の向こう側に見える、ハイジの顔。口角を片方だけ吊り上げ、二つの眼にはどこまでも深い闇が支配していた。 眼前にそびえ立つ、太くて赤黒い……ハイジの凶器。 下腹部に張り付くように反り上がり、色んな液に塗れ、てらてらと光っている。 その重厚な存在感に、ぶるっと身震いする。 整わない呼吸。落ち着かない心臓。 大きく口を開き、僅かに舌先を差し出して、迎え入れる準備を整える。 「………」 震えてしまう指先──手錠をされたまま、ハイジの下肢にそっと両手を添える。 ……好き……ハイジ、好き…… …………好き……だよ…… 舌先で裏筋を刺激し、先端を咥え込みながら優しく包み込む。瞼を薄く閉じ、咥内で張り詰めていく怒張を飲み込み、喉奥まで導いていく。 ……僕には……ハイジしか、いない…… ハイジ……だけ……… 「………ぅンっ、」 卑猥な水音に混じって響く、鼻から抜けるようなハイジの声。 その声が聞こえる度、ゾクゾクッと快感が身体の深部を駆け抜ける。 僕で感じていると解って、酷く安堵する。 ───クチュッ、ちゅっ…… アイスを頰張り、溶けた部分を舌で絡めて吸い取るように……何度も転がしながら、舐め取って……先走った液を全て飲み込む。 「………ハァ、ッ……」 ハイジの、熱い吐息。 前髪の隙間から覗き見れば、先程までの鋭さが僅かに緩み、恍惚とした表情へと変わっていた。

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