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第107話

「随分と上手いじゃん……」 ……え…… 熱い息を吐きながら、ハイジが冷めたトーンの声を発する。 「手慣れてるっつーの? オレにはフェラなんて、した事ねーのに……よっ、」 摑んだ髪とは反対の手が、ガッチリと僕の後頭部を固定し、突然、ズンッと最奥を突く。 「……っ!……ん″ぅッ、」 食道の弁が開き、苦いものが直ぐそこまで迫り上がる。 ……ぅ″え……ぇ、……っ… 何とか歯を立てずに口から外し、逃れ、嗚咽しながら背中を丸め、ケホケホと咳き込む。と、僕の髪を鷲掴んだ手が容赦なく引っ張り上げる。 「何だよ……オレのやり方じゃ、不満か?」 「………」 「なんとか言えよ」 パンッ 殴られた方とは反対の頬を叩かれる。 無意識に両手を上げ、顔の前で身構えた時だった。 ──! 無防備になった腹。 そこに、ハイジの蹴り上げた足が綺麗に入る。 「……ぅ、え″ぇ…、……」 体をくの字に曲げる。 髪なんて、どうでもいい。 足先が鳩尾に食い込んで………息が……、 「……っ、……ぅ、」 胃が痙攣し、ペコペコとビードロのように凹んだり戻ったりを繰り返す。 じりじりと頭が痺れ、目の前に現れた黒い点が急速で散りばめられ、それらが重なり合い……目の前が真っ黒になっていく。 鉛のように重たい体。 重力に負けてベッドに横たえれば、ハイジが足で乱暴に転がし、僕を仰向けにした。 「………大袈裟なんだよ、さくらは」 冷ややかな声色。 底無しに優しくて、僕をとろとろに溶かしてしまうハイジは………ここにいない。 何とか瞼を薄く開けれは、滲んだ視界の向こうにぼんやりとハイジが映り込む。 邪鬼の宿った瞳。歪んだ口元。 嬲る視線。 しゃがみ込んで僕を間近に捕らえたハイジは、冷徹な笑みを漏らしていた。 「………」 目が、離せない。 息も出来ない。 声が……出ない…… 「これでも手加減してンだぜ……? ……オラ、足開け」 朦朧とする。 眩暈がする。 尋常じゃないほどの高速メリーゴーランドに乗せられ、グルグルと回っているかのよう…… 「………、」 飛びそうになる意識の中、言われるままに膝を立て……そっと割り開く。 「……自分で弄ってみろよ」 「………」 ジャラッ…… 重厚感のある金属の擦れる音。 感覚の無くなった指先を伸ばし、重力に従順な自身のソレに触れた。

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