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第109話

「随分と上手いじゃん……」 ……え…… 熱い息を吐きながら、ハイジが冷たい声を発する。 「手慣れてるっつーの? オレには、フェラなんてした事ねーのに……よっ、」 ズンッ── 髪を摑んだまま──反対の手が僕の後頭部に回り、勢いよく自身の方へと引き寄せ、喉の最奥を突く。 「………っ!……ん″ぅッ、!」 食道の弁が緩み、苦いものが直ぐそこまで迫り上がる。 ……ぅ″え……ぇ、……っ… 歯を立てず、何とか口から外して逃れ──嗚咽しながら崩れ落ち、ハイジの足元に顔を伏せる。 背中を丸め、ケホケホと咳き込んでいると、もう一度髪を掴まれ、容赦なく頭を引っ張り上げられる。 「………何だよ。オレのやり方じゃ、不満か?」 「………」 「なんとか言えよ!」 パンッ 殴られた方とは反対の頬を、手の甲で平手打ちされる。 その衝動に、感覚の失った両手を無意識に持ち上げる。顔の前で身構え、本能的に身を守ろうとした時──だった。 「───ッッ、!」 無防備になった腹部。そこに、ハイジの蹴り上げた足が綺麗に入る。 「……っぅ、え″……ぇ…ぇ、」 身体をくの字に曲げる。 抜け切れてしまう髪なんて、どうでもいい。 足先が鳩尾に食い込んで………息が……、 「………っ″、……ぅ、」 胃が痙攣し、ビードロのようにベコベコと凹んだり戻ったりを繰り返す。 じりじりと頭が痺れ、目の前に現れた黒い点が急速に散りばめられ、それらが重なり合いながら……目の前が真っ黒になっていく。 鉛のように重い身体。 重力に負けてベッドに横たえれば、ハイジが乱暴に足で転がし、僕を仰向けにした。 「………大袈裟なんだよ、さくらは」 冷ややかな声色。 底無しに優しくて、甘くトロトロに溶かしてしまうハイジは………もう、ここにはいない。 何とか瞼を薄く開けれは、滲んだ視界の向こうにぼんやりとハイジが映る。 邪鬼を宿った眼。歪んだ口元。(なぶ)る視線。 しゃがんで僕を間近に捉えたハイジが、冷徹な笑みを漏らす。 「………」 目が、離せない。 息も出来ない。 声が……出ない…… 「これでも手加減してンだぜ……? ……オラ、足開け」 朦朧とする意識。眩暈。 高速のメリーゴーランドに乗せられ、グルグルと回っているかのよう。 「………、」 意識が飛びそうになる中、言われるままに膝を立て……そっと割り開く。 「……自分で弄ってみろよ」 「………」 カチャ…… 金属の擦れる音。 両手を下に伸ばし、感覚の無くなった指先で、重力に従順な自身のソレに触れる。

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