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第108話
夢と現実が入り混じった微睡みの中、脳に直接ガツンと鈍器で殴られたような痛みが走る。
瞬間、辺りの様相がぐにゃりと歪む。
苦しい……
怖い……痛い……怖い……
……けど……
暗くて底冷えする場所に突き堕とされながら、徐々にその環境に適応していく奇妙な感覚が襲う。
まるで……暗闇に段々と目が慣れていくみたいな……
「………」
こういう屈辱を孕んだものに、何度か虐げられた経験があるからだろうか……
それとも、こういう状況下に陥ると誰もがなるものなのだろうか……
段々と正常な意識が戻ってくる。
不思議と冷静さも取り戻しつつある。
体の方は、まだ、震えてしまうけれど………
「………」
自身を強く握り、扱く。
無理矢理掘り起こされた快感は、やはり深部に留まったまま中々沸き上がろうとしてくれない。
そもそも、こうして自分で弄った事なんてあっただろうか……
誰かに弄られる事はあっても、自ら自慰行為に耽った記憶なんて、幾ら探しても見つからない。
元々淡白なのか。
性被害に遭いすぎて、性そのものの興味が人より薄れてしまっているのか。
それとも……
「……ん、っ」
皮を根元まで引っ張って、裏筋を中心に何度も刺激を与えれば………何とか熱が集まって膨張してくる。
瞼を完全に閉じ意識をソコに集中させれば、ピクンッと僅かに反応してくれた。
「……、…ぅ……」
小さいながらも何とか屹立し、やっと芯の方が硬くなった様な気がする。
あと、少し……だ……
……あと……少……
──!
「………今、なに考えてた」
突然──ガッ、と腕を摑まれる。
グン…と下に引っ張られてすぐ、黒革のベルトの下に隠れた僕の首に、もう片方の手が掛けられた。
「……誰を想像したンだよ」
「っ、……」
指先に力が籠められ、ギリギリと絞められる。
ドクドクと強く脈を打ち、耳奥がぼぅっとし……苦しさと恐怖で体が震え、竦み上がってしまう。
「オレか?……それとも奴か?」
「………」
冷ややかなハイジの双眸。
深い闇を孕んだ瞳に捕らえられれば、その視線からも恐怖からも……逃れられない。
何とか……僅かに首を振る。
「嘘つくなよ、さくら」
指先に力が加えられる。
脈動が激しくなり……血液を流れる音が鼓膜を執拗に叩く。
「……今までオレに抱かれながら……奴との行為を思い出してたンだろ……?」
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