108 / 555

第108話

夢と現実が入り混じった微睡みの中、脳に直接ガツンと鈍器で殴られたような痛みが走る。 瞬間、辺りの様相がぐにゃりと歪む。 苦しい…… 怖い……痛い……怖い…… ……けど…… 暗くて底冷えする場所に突き堕とされながら、徐々にその環境に適応していく奇妙な感覚が襲う。 まるで……暗闇に段々と目が慣れていくみたいな…… 「………」 こういう屈辱を孕んだものに、何度か虐げられた経験があるからだろうか…… それとも、こういう状況下に陥ると誰もがなるものなのだろうか…… 段々と正常な意識が戻ってくる。 不思議と冷静さも取り戻しつつある。 体の方は、まだ、震えてしまうけれど……… 「………」 自身を強く握り、扱く。 無理矢理掘り起こされた快感は、やはり深部に留まったまま中々沸き上がろうとしてくれない。 そもそも、こうして自分で弄った事なんてあっただろうか…… 誰かに弄られる事はあっても、自ら自慰行為に耽った記憶なんて、幾ら探しても見つからない。 元々淡白なのか。 性被害に遭いすぎて、性そのものの興味が人より薄れてしまっているのか。 それとも…… 「……ん、っ」 皮を根元まで引っ張って、裏筋を中心に何度も刺激を与えれば………何とか熱が集まって膨張してくる。 瞼を完全に閉じ意識をソコに集中させれば、ピクンッと僅かに反応してくれた。 「……、…ぅ……」 小さいながらも何とか屹立し、やっと芯の方が硬くなった様な気がする。 あと、少し……だ…… ……あと……少…… ──! 「………今、なに考えてた」 突然──ガッ、と腕を摑まれる。 グン…と下に引っ張られてすぐ、黒革のベルトの下に隠れた僕の首に、もう片方の手が掛けられた。 「……誰を想像したンだよ」 「っ、……」 指先に力が籠められ、ギリギリと絞められる。 ドクドクと強く脈を打ち、耳奥がぼぅっとし……苦しさと恐怖で体が震え、竦み上がってしまう。 「オレか?……それとも奴か?」 「………」 冷ややかなハイジの双眸。 深い闇を孕んだ瞳に捕らえられれば、その視線からも恐怖からも……逃れられない。 何とか……僅かに首を振る。 「嘘つくなよ、さくら」 指先に力が加えられる。 脈動が激しくなり……血液を流れる音が鼓膜を執拗に叩く。 「……今までオレに抱かれながら……奴との行為を思い出してたンだろ……?」

ともだちにシェアしよう!