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第109話

……違う。 違うよ…… そんな事、一度も…… 視線で訴えるも、僕を捕らえるハイジは……それを許さない。 「……なぁ、さくら」 無表情のまま、ハイジの口角が片方だけ吊り上がる。 それだけで、勝手に体が震えてしまう。 「オレと別れた後も、ずっと待ってたって……言ったよな?」 「………」 ──そうだ。 ここに捕らえられてすぐ……風邪を引いて、ハイジに看病された時…… 竜一との事を言うタイミングを見失って……怖さも相まって……誤解させたままになっていた、んだ…… 「嘘、ついたんだろ? 本当の事言ったら、オレに殺されるとでも思ったンだよな。 ……なァ!?」 眉間に深く刻まれる、皺。 吊り上がる眉尻。邪気が色濃く浮かび上がる瞳。 首に掛かったハイジの手。 黒革の首輪を更に上へと押し上げれば、必然的に顎先が天を向く。 もう一方の手………僕の腕を摑んでいた手が外れ、小さくなった僕の肉茎へと伸びた。 殺されるかもしれない……って思ったのは、本当…… ……でも……嘘、ついた訳じゃない。 ハイジを待ってたのは……本当だよ…… 溜まり場を出た後、行き場を失い 風に流され、泥水の中に散っていく僕を掬い上げてくれたのが……竜一で…… 僕は彼と、一緒になった……けど…… ……ハイジと再会して ここで一緒に過ごしていくうちに、愛おしさが増して ハイジの事を知っていくうちに………深い所で繋がっているんだって……気付かされて…… 本気、……だったよ。 ハイジとなら、何もかも捨てて 一緒に逃亡して 一生、……ハイジと添い遂げようと…… 「………っ、!」 強く握られたソレを、乱暴に強く擦り上げられる。 皮が引っ張られ。乾いた指で痛めつける様に何度も扱かれ。 千切れるような鋭い痛みが脳天まで駆け上り……そのまま突き抜けていく。 「何とか言えよっ、!」 ……ッ、痛……ぁ、……! 体が戦慄く。意志とは別に。 何度も何度も扱かれるソコが、ヒリヒリと熱を持って痛む。 「……、っ」 その痛みを逃す様に息を吐き、意識を別の場所……首元へと向ければ、少しずつ感覚が麻痺していく…… その刹那。 ぽたぽたぽたっ、…… 大粒の涙が零れ落ちる。 ビー玉の様な瞳から。 僕の頬に当たり、既に自身の涙で濡れていたそれと混ざる。 ……ハイジ…… 鋭く尖った瞳。 だけどそれは、涙で濡れて 何処か哀しげに見えて…… 手錠のかかった両手を徐に持ち上げ……折り曲げた指の背を、ハイジの濡れた頬にそっと寄せた。

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