110 / 555

第110話

「……触ンじゃねぇ!」 ピシャリと撥ね除ける怒号が飛ぶ。 顔で払い。僕の首に掛けた手を外し。 手錠の鎖部分を摑み僕の頭上に叩きつけ、シーツに皺を作る。 「………聞いたぜ。この耳で。 さくらがリュウとまぐわって、アンアン喘いでンのをよ」 「………!」 ……え…… 瞬間、頭が真っ白になる。 「ネットに上がってンのを見つけたとか言って……お節介野郎がわざわざオレに教えに来てよ………」 ……ネット…… グラリ、と視界が揺れる。 ドクドクとした耳奥からの音は、僕から現実を引き剥がそうと激しく鳴り響く。 竜一に抱かれて嬌声を上げたのは………多分、あの一回だけ。 竜一に最後に会った、ガス点検日の……前日── ″ …君の喘ぐ声、聞いたよ……ハァハァ……凄く厭らしくて、聴いてて堪らなかった……ハァハァハァ… ″ まさか……あのガス会社の作業員が、盗聴したデータをネットに………? ゾクッ、と背筋が凍る。 「オレは、今までどんな噂を聞いても、さくらをずっと信じてきたんだぜ。 ………バカみてぇにな」 ハイジの黒い瞳が小さく何度も揺れる。 その度に……深くて暗い闇の中を、憂いという感情が静かに滲んでいく。 僕の両手をベッドに深く沈めながら、割り開かれた下肢の間にハイジの体が入り込む。 僕のモノを握っていた手が離れ、その腕で僕の膝裏を引っ掛けグイと持ち上げた。 「凄ぇムカついたぜ。あんなの聞かされた時は。 嫉妬で気が狂いそうで………その辺の野郎をとっ捕まえて、殴り殺してやりてぇ衝動に何度も駆られたよ。 でもその度に、さくらの悲しむ顔がチラついて。何度も何度も必死に抑えて………よォ」 「………っ、!」 ズンッ、、 凶器にも似たハイジのソレが、慣らされていない後孔を無理矢理こじ開け、根元まで一気に捩じ込んでくる。 メリメリ……と裂ける感覚。 その痛さを逃せぬまま、容赦なく開始されるピストン。 「……ぃ″、あぁっッ……、」 内臓を抉られる、痛みと吐き気。 動く度に入り口は切れて、ピリッとした鋭い痛みが走る。 痛みと恐怖で腰が引け、苦しくて息が止まりそうになる。 「蕩けたような目ぇして、オレに縋ってくるさくらを見て…… 疑ったらコイツに悪ぃって。思い直したりもしたのによ。 ……なのに、何だよ。 全部、本当の事だったのかよ──」

ともだちにシェアしよう!