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第110話
「……触ンじゃねぇ!」
ピシャリと撥ね除ける怒号が飛ぶ。
顔で払い。僕の首に掛けた手を外し。
手錠の鎖部分を摑み僕の頭上に叩きつけ、シーツに皺を作る。
「………聞いたぜ。この耳で。
さくらがリュウとまぐわって、アンアン喘いでンのをよ」
「………!」
……え……
瞬間、頭が真っ白になる。
「ネットに上がってンのを見つけたとか言って……お節介野郎がわざわざオレに教えに来てよ………」
……ネット……
グラリ、と視界が揺れる。
ドクドクとした耳奥からの音は、僕から現実を引き剥がそうと激しく鳴り響く。
竜一に抱かれて嬌声を上げたのは………多分、あの一回だけ。
竜一に最後に会った、ガス点検日の……前日──
″ …君の喘ぐ声、聞いたよ……ハァハァ……凄く厭らしくて、聴いてて堪らなかった……ハァハァハァ… ″
まさか……あのガス会社の作業員が、盗聴したデータをネットに………?
ゾクッ、と背筋が凍る。
「オレは、今までどんな噂を聞いても、さくらをずっと信じてきたんだぜ。
………バカみてぇにな」
ハイジの黒い瞳が小さく何度も揺れる。
その度に……深くて暗い闇の中を、憂いという感情が静かに滲んでいく。
僕の両手をベッドに深く沈めながら、割り開かれた下肢の間にハイジの体が入り込む。
僕のモノを握っていた手が離れ、その腕で僕の膝裏を引っ掛けグイと持ち上げた。
「凄ぇムカついたぜ。あんなの聞かされた時は。
嫉妬で気が狂いそうで………その辺の野郎をとっ捕まえて、殴り殺してやりてぇ衝動に何度も駆られたよ。
でもその度に、さくらの悲しむ顔がチラついて。何度も何度も必死に抑えて………よォ」
「………っ、!」
ズンッ、、
凶器にも似たハイジのソレが、慣らされていない後孔を無理矢理こじ開け、根元まで一気に捩じ込んでくる。
メリメリ……と裂ける感覚。
その痛さを逃せぬまま、容赦なく開始されるピストン。
「……ぃ″、あぁっッ……、」
内臓を抉られる、痛みと吐き気。
動く度に入り口は切れて、ピリッとした鋭い痛みが走る。
痛みと恐怖で腰が引け、苦しくて息が止まりそうになる。
「蕩けたような目ぇして、オレに縋ってくるさくらを見て……
疑ったらコイツに悪ぃって。思い直したりもしたのによ。
……なのに、何だよ。
全部、本当の事だったのかよ──」
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