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第116話
僕を腿の上に乗せ、向かい合わせになる。まだハイジのモノが、僕のナカに挿ったままで。
「……」
もう、そういう事はしないのか。一向に動く気配はない。
落ち着かなくて、不安で。
怖ず怖ずと口を開く。
「……ハイ、ジ……?」
「暫く、このまま───」
僅かに動いた衝撃だろうか。それとも、ナカで刺激があったのだろうか。
少しだけ緩んでいたハイジのモノがビクンと脈動し、直ぐに張り詰めていく。
小さく呻き、ぶるっと肩を震わせると、口角を少しだけ持ち上げ、片手で僕の頬を包み込む。
「………さくらと、繋がっててぇ……」
熱を伴い、腫れぼったくなってる頬。下瞼にハイジの親指が触れ、横に引き、既に乾き始めて粘着を帯びた涙を攫う。
もう片方の手が背中に回り、力強く引き寄せられながら視界いっぱいになっていくハイジの唇。
「………」
そっと瞼を閉じる。
その目尻に当てられる熱。
……震えて……る……?
ハイジの唇が、指先が、僕に触れている全てのものが……
「……さくらが、心の中で誰を想おうと、咎めたりしねぇから。今は。
……だから……オレから、離れようとすんな。絶対」
寂しそうな眼。
雨の中、道端に捨てられ縋り付くような瞳を向ける……仔犬のよう。
その頭を、よしよしと撫でてあげたくなる。
大丈夫、僕がついてるから……と抱き締めて、安心させたくなる。
ハイジの好きにして……そう伝えて、僕の全てを委ねたくなってしまう。
………でも、それじゃ……駄目、なんだ……
「………泣くなよ」
苦しそうな声を上げるハイジ。
スッと唇を寄せ、チラリと見せた舌先でその涙を掬う。
「そのままのさくらで、いいからさ。
オレの傍にいてくれ。
……一緒に、逃げよう。……な?」
頬に触れていた手が、後頭部へと回り、ハイジの肩口へと誘導される。
「……」
小さく、頭を横に振る。
でも、直ぐにハイジの手に力が籠められて……ギュッと強く抱き締められる。
まるで、僕の答えを無かったものにするかのように………
「……何で、だよ……」
耳元で、ハイジが小さく呻く。
苦しそうに。声を押し殺しながら。
「何でだよ……さくら───」
熱いものが落ち、僕の肩口を濡らす。
それがハイジの涙だと、直ぐには気付けなかった───
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