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第121話

ハイジは、ちゃんと解ってた。 部屋を出る前、『……じゃあ、な』って。 こっちを、振り返らずに…… なんで、気付かなかったんだろう。 「じゃ、リュウさんに連絡……しますね」 僕の様子を伺いながら、モルが念押しする。 僕はゆっくりと頷いた。 ……声にしたら、涙が溢れてしまいそうで。 僕に背を向けて、モルが電話を掛ける。 しかし出ないのか……モルは数回掛け直していた。 「……モル」 その背中に声を掛ける。 「モルは、今までどうしてたの……?」 竜一が用意してくれたアパートに連れて行ってくれた日から、モルの姿を見かけなかったのが……気になっていた。 「……」 真顔で振り返ったモルは、携帯を持つ手を下げた。 それは、先程とは違う雰囲気で……僕はモルの顔をぼんやりと見つめながら、モルの言葉を待った。 「……親父が、亡くなったんッス。 隠居してその跡目をタイガさんに、って話があったんスけど、まだ若すぎるって理由で揉めてる最中に。 私情の縺れや組織体制への不満もあって、太田組は……大友組と虎龍会に分かれたんスけど。 ……今、潰し合ってるんスよ」 「……」 ″ 兄貴が継いだら、俺を解放する約束をしてくれてる。 上手くいきゃあ、お前の世界に戻れる ″ 以前、竜一はそんな事を言っていた。 僕は裏社会の事なんてよく解らないけど……そんな状況だからこそ、僕の存在が知られて巻き込まれないよう、警戒していたんだ。 「それで俺は……リュウさんのいる虎龍会じゃなく、大友組の下っ端……やってんッス……」 モルの視線が落ち着かない。 「……じゃあ、今まで竜一の運転手がモルじゃなかったのは……」 僕の言葉に、視線を横に外しながら軽く頷く。 「……まぁ、そういう事ッス」 「そっか……」 良かった。 僕はまた、モルに何かあったんじゃないかと思ってたから…… 「……」 ……でも、どうして。 モルは竜一と同じ組じゃないんだろう……
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