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第127話
「……わかった」
ケットを引き上げ、身構える。
僕の返答を聞き、龍成がモルから手を離した。……もうお前に用はないと、言わんばかりに。
僕と龍成のやり取りに、モルが背中を丸め喉元を押さえながら声を絞り出す。
「……ひめ……っ、」
「……」
ゆっくり立ち上がった龍成が、ハイジの比ではない……邪鬼の宿った表情をしながら僕に近付き、ベッド端に腰を下ろす。
その顔がスッと近付き、僕の耳元でボソリと囁かれる。
「……アゲハの居場所、教えろ」
「え……」
予想外の台詞に、一瞬、理解が追い付かなかった。
「……」
どういう、事だ……?
龍成とアゲハは、中学時代……仲の良い友達だった。
家に招き入れた事もある。
……だけど。
暴力団組員ではないけれど、アゲハのバックにはタイガ………龍成と敵対する組織、虎龍会がついている。
アゲハに危害を加えるつもり、なのだろうか。
「それ聞いて、どうするの?」
手が、体が、……震える。
だけど、アゲハが悪いようにされてしまうのは嫌だ。
「……愚問だな」
鼻で笑った後少しだけ瞳が緩み、何か含んだような……シニカルな笑みを漏らす。
「久し振りにツラ、この目で見たくなっただけだ」
龍成の掌が僕の顎下に差し入れられ、クイッと強引に持ち上げられる。
冷めた瞳。
その瞳の奥には、暗くて冷たい闇ばかりが広がり、終わりが見えない──
……吸い込まれる。
底冷えする程心が震え
……怖い……のに、
目が、離せない……
「……あー、龍成さん」
その時、部屋の入り口から人影が差し込んだ。
緊迫した雰囲気にそぐわない、人懐っこい声。柔和な口調。
そのせいで、一気に空気が緩む。
「……って。
まさか、その子に手ぇ出しちゃうつもりでした……?」
その声に、龍成が僕からパッと手を離す。
冷たい瞳が其方へと動き、それに引っ張られる様に僕も視線を動かした。
龍成の肩越しから聞き覚えのある声の主を見れば、そこに立っていたのは
──吉岡だった。
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