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第130話

……どうして、ここに…… 吉岡、が………? ガールズバーで竜一と落ち合い、ドア向こうへと消えていく二人の姿が思い出される。 「………バカが」 軽く舌打ちし、眉間に皺を寄せた龍成が小声でそう吐き捨てると、肩で風を切りながら吉岡の方へと向かって行く。 「……姫」 立ち上がったモルが、龍成の眼を掻い潜り、僕の傍まで駆け寄る。 「何も、されなかった……ッスか……?」 「……ん。大丈夫」 心配そうに僕の顔を覗き込むモルに、口角を持ち上げただけの笑みを返す。 「それより──」 目の前のモルから、入り口付近に立つ二人に視線を移す。 「あの人って……」 「……ああ。吉岡(あいつ)は今、裏で『道具屋』やってるんッス」 「……え、道具、屋……?」 戸惑う僕に、モルが簡単に説明してくれる。 「道具屋は、トバシやレンタルの携帯とか、架空名義の銀行口座とかを調達する人の事ッス」 トバシとは、使い捨ての事。 レンタルとは、足がつかずに一定期間使用できる事。 「……」 その道具屋が、どうしてここに……? 竜一と龍成の二人と、繫がりがあるって事……? 「……モル。吉岡は……ヤクザ、なの?」 モルに顔を向ければ、眉尻を少し下げた顔を見せる。 「……んー、どうなんッスかね。 この裏社会では、犯罪グループが自前で作った『道具屋』もいるんスけど、独立してやってる人もいるんスよ。 吉岡は、亡くなった太田組長の“実子”ってコネを使って、それなりに太いパイプ持ってるらしいッスから。 ……恐らく、一匹狼だと思うッス」 「……」 組長の、子……!? それって……つまり…… 虎龍会でも、大友組でもない……中立の立場に属してる、って事……? 「姫が住んでるアパート名義も、確か……リュウさんが吉岡に依頼したものらしいッスよ」 「……え……」 『……あ、俺同じアパートの……隣の部屋に住んでる、吉岡っていいます』──スーパーで話し掛けられた時の事が、思い出される。 じゃあ……最初から…… 僕がどんな人物か──解ってて……近付いた、の……?

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