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第130話

「その情報は、信用していいと思います」 「……」 吉岡の言葉に、龍成の瞳の色が少し変わる。 「僕なら上手く聞き出せますよ。 ……それより。彼をこのまま菊池さんの所に連れて行きますか?」 柔和な笑顔を向けたまま、吉岡がサラリと言ってのける。 人懐っこそうな、忠犬みたいな表情で。 「……好きにしろ」 組長の孫……だからなのか。 それとも、バックに大きな後ろ盾でもあるのだろうか。 先程からアッサリと引き下がる龍成が、何ともらしくない。 「了解でーす」 軽い口調で返事をした吉岡は、柔やかな顔のまま僕を見た。 「……」 この人は、どっちなんだろう。 僕に対して……敵なのか味方なのか…… 僕を知ってる癖に、初対面の振りをしているのは……何故……? 澄んだ瞳の奥には、ハイジや龍成の様な邪気が見当たらない。 闇の世界に生きている人間とは思えない。 ……解らない。 何が目的なのか。 全く見えない。 「彼を浴室まで連れてくの、手伝ってよ」 その視線が直ぐにモルへと移る。 金髪スカジャン男は、訝しげにモルから乱暴に手を離した。 全裸のまま、二人に抱えられてシャワールームに辿り着く。 「……危ない所だったねぇ、類くん」 類……元宮類は、モルの本名だ。 吉岡が細めた目をモルに向ける。 僕は浴室の壁に手を付き、服を着たままのモルにシャワーの準備をして貰う。 ……類くん…… モルの事、そんな風に呼ぶ仲なんだ…… 「俺の事は全然。……それより姫、一人で大丈夫ッスか……?」 「えっ、何それ。姫の後処理、類くんがやるの……?」 心配そうに僕の顔を覗き込むモルを、吉岡がからかって笑い出す。 「……!」 姫…… 砕けた物言いに、二人の距離の近さを感じていたのは確かだけど…… それを僕に対しても、するなんて…… 幾ら何でも、図々しすぎる。 「……」 吉岡の方に視線だけ向ければ、屈託のない笑顔を浮かべているのが見えた。 「それリュウさんが知ったら、絶対只じゃ済まないと思うよ」 「……そりゃあ、そうッスよ」 「ははっ。ムキになっちゃって。 モルってそういうトコ可愛いよね。……顔真っ赤」 言いながら、吉岡がモルの肩に腕を回す。 モルはそのまま引っ張り出されそうになり、お湯が出たままのシャワーヘッドを僕に寄越した。

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