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第131話

バタンッと浴室のドアが閉まる。 その向こうからほ、一切の声や音が聞こえない。 「……」 ザ──ッ 壁に片手を付けたまま、シャワーを頭から被った。 熱くもなくぬるくもないお湯が、髪の先から滴り落ち、体の表面を伝って流れ落ちる。 気が抜けたのか……足がガクガクと震えた。 体中がギシギシと痛くて…… 内腿が痙攣するし、腰も痛い。 まだ腫れてるだろう顔に直接シャワーを掛ければ、水圧が刺激になって気持ちいい。 シャワーヘッドを壁に掛け、両手を壁に付いて体を支える。 ザ──ッ この状態の僕を…… しかも、若葉ではない……単なる息子である僕を…… 相手は抱こうと思わないだろう。 寧ろ逆鱗に触れるんじゃないか…… 龍成の世話になった人……という位だ。 普通の人じゃない事くらいは解る。 ぶるっ、と体が震える。 痛みを知った身体は、恐怖で勝手に戦慄いてしまう。 ……でも、これは ハイジの為だ…… ザ──ッ 床に流れた水が、渦を巻きながら排水溝に吸い込まれていく。 暗くて、悍ましく汚れた地下に。 ウィークリーマンションを出る。 髪はまだしっとりと濡れたまま…… 日射しの下に身を曝すのは、久し振りだった。 想像以上の強い日射しに、一瞬目が眩む。 玄関を出る時、大麻を栽培していた部屋のドアが開いていた。 電気が点き、棚にあった全てのプランターが運び出されていて……もぬけの殻。 その近くにあった筈のノートパソコン。 それも、ない。 ……ハイジが、持っていったんだろうか…… それとも…… 「……姫、どうぞ!」 車の後部座席のドアを開け、吉岡が僕に手を差し出してエスコートをする。 そのわざとらしさが何とも不快で、僕は無視して車に乗り込んだ。 反対側のドアから、モルが乗り込む。 座席に手を付き、モルの耳元に顔を寄せた。 「……モル。吉岡と親しいみたいだけど……」 少なくとも、モルに対しては味方……なのだろうか。 「えっ、何言ってんスか。……吉岡ッスよ?」 僕の言葉に、モルが驚いた顔を見せる。 モルの言葉の意味が解らないでいると、モルが続けて言った。 「ていうか姫、覚えてないんスか? 吉岡は、俺らハイジの元チームの人間ッスよ」

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