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第137話

滑走路のように、道の両端に点々と幻想的なライトが点いている。その光に誘導され、車が吸い込まれる。 そこは、一般的なラブホテルとは違い、一部屋ずつ独立したペンションタイプだった。受付等で他の客と会うリスクの無い所がメリットか。 「連れてきました」 その一つに車を停め、吉岡の手を借りながら小屋へと入る。 入ってまず驚いたのは、そこに数名の若い男女が入り混じっていたから。 ベッドに座って何やら書類を広げる女子。その隣で紙を覗き込む男子。「……誰?」と洗面所から姿を現す男子。その入口付近の壁にもたれ掛かり、資料を見ながら電話している女子…… その光景は、ラブホテルを利用したオフィスのようだ。 「……工藤……?」 名前を呼ばれて視線を向ける。 ベッド奥から現れた男子が、驚いた顔を此方に向けていた。 「……」 「何で、ここに工藤が……」 誰……? 今初めて見たような顔をすれば、隣に立つ吉岡が口端を緩く持ち上げる。 「……見覚えないの?」 「……」 「例えば、同級生とかさ……」 含んだような言い方。 きっと、同じ学校の生徒だと言いたいんだろう。 だけど殆ど学校に通っていない僕に、その質問は酷だ。 一応思考を巡らせてみるけれど……やっぱり思い出せない。 「菊地さんは?」 無反応の僕に飽きたのか、吉岡がそいつに柔らかく声を掛ける。 「菊地さんなら……さっき出て行きました。 ……客人が来たら、隣に通せって言い残して……」 同級生らしき男は、真面目な表情で吉岡に答えながら、チラッと僕を盗み見る。 「……」 異物を見るような目……じゃない。 動揺している目だ。 まさか、ここで問題児の僕と会うとは思ってなかったんだろう。 「ん、解った。……じゃあ、そこに案内してよ」 「……あ、はい」 男は抱えた資料をベッドに置き、此方へ向かってくる。 他の男女は、此方をチラリと見ただけで、何事もなかったかのように作業に没頭していた。 その光景が、何だか異様に感じる…… 「こっちです」 男は低姿勢で吉岡に声を掛けると、率先して出入口のドアを開けた。

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