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第139話

滑走路の如く、道の両端に点々と並ぶ幻想的なライト。その光に誘われ、車が吸い寄せられていく。 そこは、一般的なラブホテルとは違い、一部屋ずつ独立したペンションタイプになっていた。受付等で他の客と会うリスクの無い所がメリット、という所だろうか。 「連れてきました」 その一つに車を停め、吉岡の手を借りながら小屋へと入る。 入ってまず驚いたのは、想像だにしていなかった数人の若い男女の姿があった事。 ベッドに座って何やら書類を広げる女子。その隣で紙を覗き込む男子。「……誰?」と洗面所から姿を現す男子。その入口付近の壁にもたれ掛かり、資料を見ながら電話をしている女子…… その光景は、ラブホテルを利用したオフィスのよう。 「……工藤……?」 名前を呼ばれて視線を向ける。 ベッドの向こう側から現れた男子が、驚いた顔を此方に向けていた。 「……」 「何で、ここに工藤が……」 誰……? 初めましての顔をすれば、隣に立つ吉岡が顔を寄せ、耳元で囁く。 「知ってる奴?」 「……」 「……見覚えは? 例えば、同級生とか」 何処か含んだような物言い。 もしかしたら、知っててわざと引き合わせたのかもしれない。 だけど。殆ど学校に通っていない僕に、そのダメージは殆どない。一応クラスメイトの顔を思い出そうと努力してはみるものの……やっぱり思い出せない。 「菊地さんは?」 無反応の僕がつまらなかったんだろう。吉岡が、ソイツに柔らかな声を掛ける。 「菊地さんなら、さっき出て行きました。 ……えっと……客人が来たら隣に通すよう、言付けて」 同級生らしき男は、真面目な表情で吉岡に答えながら、チラッと僕の顔色を盗み見る。 「……」 異物を見るような目付き……じゃない。 動揺している目だ。 まさか、ここで同級生──しかも、嫌われ者の問題児にバッタリ会うとは思っていなかったんだろう。 「ん、解った。……じゃあ、そこまで案内してよ」 「………あ、はい」 男は抱えた資料をベッドに置き、急いで向かってくる。 他の男女は、此方をチラリと見ただけで、何事もなかったかのように作業に没頭していた。 その光景が、何だか異様に感じる…… 「こっちです」 男は低姿勢で吉岡に声を掛けると、率先して出入口のドアを開けた。

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