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第167話

早朝にも関わらず、ウザいくらいの熱血口調。加えて優等生ぶった、爽やかな声色。 奴の声を聞いただけなのに、寝起きからドッと疲れたような気がする。 「……」 「開けるけどいいか?……入るぞ!」 そう言われて、やっと自分の身形に気付く。 ケットの下は、全裸。 交接行為はなかったけど。フェラチオを二回程し、全身をくまなく愛撫され、素股を何度か…… そのまま眠ってしまったようで、ティッシュで軽く拭き取られてはいるものの……乾いた精液が身体中にこびり付いていて、パリパリとしている。 ガチャッ…… 開かれたドアから現れる、五十嵐のシルエット。 その背後からは、眩い程の、朝日…… ゆっくりと横向きのまま身体を起こせば、ケットがスルリと素肌を滑り落ち、腰の辺りで留まる。 腰までの上半身が剥き出しになると、目が合った五十嵐の視線が徐に下がった。 「……ぉわっ、と……!」 絵に描いた様なコミカルな動き。驚いた表情のまま軽く両手を上げ、数歩後退る。 このまま入っていいものか、躊躇しながらチラリと僕を見た。 「………なに?」 「な、何って……、か……隠せよ。 ……そういう、生々しいの……」 生々しい……? 五十嵐の視線の先にある、胸の辺りに指を添える。 そこにあったのは、もうだいぶ薄くなった、ハイジのキスマーク。 「……」 ああ、これの事……? これの何処が生々しいんだろう。 学校でも特に隠した事なんてないし、そういう意味で騒がれた事もない。 ……確かここで会った日も、これを見なかったっけ……? それに、上半身裸でも男なんだから、別にどうって事ないと思うけど…… 「……いいか、入るぞ。……か、隠しとけよ……!」 「うん……」 顔ごと視線を逸らし動揺する五十嵐に答えながら、ケットを引っ張り上げて身体を包む。 中に入った五十嵐は、僕に背を向けサイドテーブルの上を片付け始める。 大きめのビニール袋に次々と残骸を放り込み、近くにあったウエットティッシュでテーブルを拭き取る。 その慣れた手つきをぼんやりと眺めていると、五十嵐の動きが急に止まった。 「……なぁ、工藤。 お前、どっか行きたい所とかある? ゲーセンとか、カラオケとか、……何でもいい。どっかないか?」 拭き終わって汚れたウエットティッシュを、言い終わると同時にゴミ袋に放り込む。それから小さなゴミ箱を拾いあげ、精液の匂いがするだろうティッシュの山も放った。 「菊地さんに頼まれてさ。……工藤を外に連れ出して、気晴らししてやってくれって」 「……」 どういう、風の吹き回しなんだろう…… 五十嵐と外出するよう、取り計らうなんて。 もし僕が、そのまま逃げたら……とか、考えたりしなかったんだろうか……

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