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第168話

運転手……真木の台詞に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。 『俺、決して姫を、そういうつもりでやった訳じゃないッスから……』 脳裏を過るのは、必死に訴えるモルの瞳。 ……そんな…… 指先が震える。 どんどん冷たくなって、感覚が無くなっていく…… セックスを、毛嫌い……って…… だから……夜通しさせた、って…… その感覚を取り戻そうと、膝の上で左右の手を合わせ指先を揉んだ。 ……そういえば、あの動画………誰が撮影したんだろう…… 固定されてた訳じゃない。 あのアパートに、撮影者が侵入した感じで撮られていた。 『すいません、……』 『マジで……すいませんッス』 動画の中のモルは、僕に何度も何度も謝っていて…… ──もしかして、誰かに脅されて……? それで仕方なく僕を……… 「……!」 その瞬間。 合わせた手の甲に掌を重ねられ、ビクッと小さく肩が跳ねた。 「寒いの?……オレが温めてやろーか?」 軽くキュッと握った後、いやらしい手つきで撫でてくる。 僕の指先を揉み……剥き出しの太腿に、わざとらしく小指の先から触れ、そのまま手を太腿に移動すると……内側に指先を差し入れてきた。 咄嗟に五十嵐を見る。 ……が、真後ろで起こった出来事など全く気付く様子もなく。真木に顔を向け、何やら楽しそうに会話をかわしている。 その真木に視線を移す。 五十嵐の話に乗っかりながら、時折チラリと顔を横に向け、五十嵐に視線を送っていた。 「……」 僕が何も言わず抵抗もせずにいれば、その手は、内腿の柔らかい部分を柔くゆっくりと揉む。 「……昨日、ヤったろ。 シャワー浴びてねーの?……そういう匂い、ぷんぷんすんぜ」 首を傾げ、怪しまれない程度の距離まで近付いた愁は、柔肌の上に乗せた手をスルリと滑り上げた。 コイツ……

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