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第170話
運転手──真木の台詞に、ドクンと心臓が大きく跳ねる。
『俺、決して姫を、そういうつもりでした訳じゃないッスから……』──脳裏を過るのは、必死に訴えるモルの瞳。
……そん、な……
指先が震える。
どんどん冷たくなって、感覚が奪われていく。
セックスを、毛嫌い……って……
なのに……夜通しさせた、って……
その感覚を取り戻そうと、膝上で左右の手を擦り合わせ、指先を揉む。
……そういえば、あの動画──誰が撮影したんだろう……
カメラが固定されてた訳じゃない。撮影者が侵入した形で撮られていた。
『すいません、……』
『マジで……すいませんッス』
動画の中のモルは、何度も何度も謝っていた……
──もしかして、誰かに脅されて……?
それで、仕方なく僕を……?
「……!」
その瞬間──合わせた手に手のひらを重ねられ、ビクッと小さく肩が跳ねる。
「寒いの?……オレが温めてやろーか?」
軽くキュッと握った後、愁がいやらしい手つきで撫で回す。
僕の指先を揉み、剥き出しの太腿にわざとらしく小指の先から着地させる。その感触を確かめるように太腿へと移れば……その内側に指先が差し込まれた。
咄嗟に、五十嵐を見る。……が、真後ろで起こっている出来事など、気付く筈もなく。真木に顔を向け、何やら楽しそうに会話を交わしていた。
その真木に視線を移す。
五十嵐の話に乗っかりながらも、時折チラリと顔を横に向け、五十嵐に視線を送っていた。
「……」
僕が何も言わず、抵抗もせずにいれば、差し込まれた指がゆっくりと動き、内腿の柔らかい部分をいやらしく揉んだ。
「………昨日、ヤったろ。
シャワー浴びてねーの?……そういう匂い、ぷんぷんすんぜ」
首を傾げ、怪しまれない程度の距離まで近付いた愁は、ニヤついた声でそう言いながら太股の隙間に差し込んだ手をスルリと滑り上げた。
──コイツ……!
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